鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

融資総額は減価償却費+利益の7倍まで

[要旨]

経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、現在の融資額が、減価償却費+税引後利益の7倍以内になることが望ましく、10倍以上になると要注意レベルということですが、前もって自社の状況を把握したうえで銀行に融資相談に行くことが望ましいということです。なお、事業計画をつくるときも、融資を返済できるだけの利益が見込めるように作成することも大切だということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、銀行融資には信用保証協会の保証を付ける保証付き融資と、協会の保証をつけないプロパー融資があり、なるべくプロパー融資を利用することが望ましいものの、協会保証を条件とする自治体の制度融資には、プロパー融資よりも有利な融資があるということについて説明しました。

これに続いて、三條さんは、自社の融資可能額を把握することが大切だということについて述べておられます。「返済能力は経営者がしっかり押さえておくベきこと。それゆえ、経営者の借入金に関する最大の関心事は、どのくらいまでなら借入しても大丈夫だろうか、ということでしょう。債務償還年数、つまり、借入金の完済まであと何年かかるかを見場合、5~7年未満なら『健全範囲』、10年を超えると『要注意』レベルです。どんなに長くても、15年で返済できる会社の力をもつことが必要です。

毎年、そうムリなく返していける返済額の目安は、『年間減価償却金額十税引後利益』です。金融機関に融資の相談をもちかける前に、自分の会社の返済能力についてしっかり把握しておくこと。これは常識以前の話だといいたいところですが、実際はほとんどの経営者がこれを怠っています。実際、私の講演会で『自社の返済能力を知っている人は手をあげてください』と声をかけたところ、手をあげたのは10分の1程度。これが実情です。

仮にも融資を受けて事業展開をしていこうとする経営者が、これらのことを把握していないようでは、金融機関もその経営者の話に耳を傾ける気持ちにはなりにくいでしょう。事業計画を考えるときには、常に、返済能力と並行して考える姿勢を身につけるようにしてください」(199ページ)

融資を受けたいと考えている中小企業経営者にとって、銀行が融資をしてくれる金額はいくらくらかというところは気になるところだと思います。その金額はどのように見積もるのかということについては、三條さんがご説明しておられるように、年間減価償却費+税引後利益(これをキャッシュフロー(CF)といいます)の10倍が目安です。例えば、減価償却費が1,000万円、税引後利益が500万円の会社は、1億5,000万円が目安です。

そして、仮に、この会社がすでに1億円の融資を受けている場合は、あと5,000万円の融資を受けても返済が可能と見積もることができます。ただし、すでに受けている融資のうち、商品仕入代金など、期限一括返済の短期融資がある場合は、その金額は含めないことが多いようです。しかし、これは、CFから見積もる金額であり、会社の資産の状況や、業界の傾向など、さまざまな要因で最終的な融資判断をするということにも注意が必要です。

ただ、中小企業の多くは、黒字額が少ないことから、CFから見積もる融資可能額はあまり多くないことも現実です。そこで、CFから見積もる融資可能額よりも多額の融資を受けたい時は、事業計画書を作成し、融資を受けることで行う新規の設備投資でCFの増加が見込めることを、銀行に説明する必要があります。もちろん、事業計画の見込みについても、銀行は慎重に評価するので、事業計画書をつくりさえすれば融資を受けることができるとは限りません。

ただ、CFによる融資可能額をあらかじめ見積もっておいたり、事業計画書を作成しておくだけでも、銀行に対しては説得力のある説明ができ、融資の承認を得ることができる可能性が高くなります。経営者は、銀行から安定的に資金調達を行うことも大切な役割ですので、銀行に融資を相談するにあたっては、このような準備もしっかり行うことは欠かせません。

2025/11/28 No.3271