[要旨]
経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、経営者の方は、自社を倒産させなことが最大の使命なので、1年から3年先まで見据えた資金繰表をつくって資金管理を行い、融資申請を行う場合は、決算書とともにその資金繰表を提出しなければならないということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、金融機関の預金額のうち、融資額がどれだけの割合を占めているかを示す指標を預貸率といいますが、それが低い金融機関は融資に消極的なので、預貸率が80%以上の金融機関と取引することが望ましいということについて説明しました。
これに続いて、三條さんは、銀行へ融資の依頼に行くときは、きちんと資料を揃えて持参しなければならないということについて述べておられます。「金融機関は取引にあたって、必ず、直近3年分の決算書の提出を求めます。それがそそれがそろっていなければ融資の検討さえしてもらえません。ところが、それさえ持参していない。もっとひどい場台には、決算書を1度も見ていない、基本的な数字も理解していない経営者もいるのにはびっくりします。銀行に限らず私のところに来るときも同じです。
私のところに来る方は、どこかに行き詰まりか、漠然とした不安を感して来られます。不安なら何が不安か、行き詰まっているなら、どこがどのように行き詰まっているのか。そこをひも解いていき、対応策を考えていく。それが私の役割です。コミュニケーションカというと、担当者とどう話すか、どんな言葉づかいをするかというようなことを連想するかもしれませんが、データ提供、とりわけ数字を示すことはコミュ二ケーションの大きな要素の1つだということを忘れないでください。
私も相談を受けると『ここ数年の決算書を見せていただけますか』とお願いします。すると、『決算書ですね、はい、もちろん、用意してきました』と二つ返事で決算書を差し出す方もいます。なかなか用意がいいな、と感心しかけると、肝心な書類が抜けている場合や試算表だけ持ってくる方が少なくないのです。経営者として知っておかなければならない数字や確認しておきたい情報がないと正しい判断を下せません。経営者の最大の使命は、会社を倒産させないことです。
企業は赤字になったからといって、すぐにつぶれるわけではありません。キャッシュフローがうまくいかなくなる。つまり、支払いに回すお金が尽きたとき、会社は倒産するのです。この1年は赤字だったとしても、そこからどうやって黒字に転換させていくのか、まず1年先そして3年先まで見据えて資金繰り表をつくって、キャッシュフローが枯渇しないようにチェックしていく、これは経営者の最大の仕事です」(188ページ)
三條さんは、ご相談に来た経営者の方が、「決算書を持参していない、決算書を見たことがない、基本的な数字を理解していないこともある」と述べておられますが、私も、融資に関するご相談を受けるときに、割合はあまり高くないものの、そのような経営者の方にお会いすることがあります。そして、決算書を持参せずに、銀行に融資の相談をする経営者の方は、単に、必要な書類が分からなかったということではないことは明らかでしょう。あまりよい例えではないですが、決算書を見せずに銀行から融資を受けようとする方は、病院に行って医師の方に身体を診てもらうことなく、薬を欲しいと言っているようなものです。
では、そのような経営者の方が、なぜ融資の相談に決算書が必要と思わないのかというと、恐らく、日常の財務管理は、支払い資金が足りるか足りないかしか見ていないからだと思います。もちろん、手元資金が最も大切であるということに間違いはありませんが、手元資金を確保するには利益を得なければならないわけですが、そこまでの会計リテラシーがないということなのだと思います。そして、銀行は、そのような経営者の方が経営する会社に対しては、将来性はあまりないと判断してしまいます。なぜなら、仮に、現在は黒字であったとしても、経営者の方がきちんと財務管理ができないのであれば、遠くない将来、赤字になる可能性が高いと考えるからです。
では、どうすればよいのかというと、三條さんが述べておられるように、「1年先から3年先まで見据えて資金繰り表をつくる」ことから始めることをお薦めします。とはいえ、3年先までの資金繰表の作成は難しいので、次月から12か月先までの月別資金繰表を作成することから始めるとよいと思います。これは作成し始めるとわかりますが、12か月先までの資金繰表は、12か月先までの収入計画と支出計画が必要になります。したがって、12か月間の事業計画を作成することになるので、最初は労力がかかると感じるかもしれません。
でも、そういった作業をしていく中で、自社の財務状況を把握することができ、そのことから改善できる点を発見することもあります。そして、12か月先までの資金繰表があるだけでも、融資の相談のときの銀行からの質問は半分くらいは減るでしょう。実は、資金繰表の作成は、労力がかかるように思われますが、その作成に費やした労力以上の労力を減らしたり、改善のヒントを得ることができたりするものだと、私は考えています。そして、それを繰り返していくうちに、経営者の方は、経営者としてのスキルを高めて行くこともできると思います。
2025/11/26 No.3269
