鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

預貸率が高い金融機関と融資取引をする

[要旨]

経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、金融機関の預金額のうち、融資額がどれだけの割合を占めているかを示す指標を預貸率といいますが、それが低い金融機関は融資に消極的なので、預貸率が80%以上の金融機関と取引することが望ましいということです。また、自ら取引銀行を選別するという姿勢も大切だということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、あるレストランチェーンは、急激に事業拡大をしましたが、その後、客足が遠のき、資金繰が苦しくなったものの、銀行からの支援を継続してもらうために、融資返済を優先し、税金、支払代金、給与などの支払いを遅らせたそうですが、税金を滞納すると差押えを受けることがあり、その後は融資を受けることができなくなるので、注意が必要ということについて説明しました。

これに続いて、三條さんは、銀行の預貸率について述べておられます。「金融機関の“借入実績”を示す数値に『預貸率』があります。金融機関の一番の収益源は、顧客から集めた預金を貸し出し、金利の差で利益を得ることです。したがって、預金残高のより多くを貸し出しに回している金融機関のほうが収益力は高いことになります。『預貸率』は集めた預金のうち、どのくらいを貸し出しているかを示す数字です。預金残高が1兆円あり、そのすベてを貸し出しに回していれば、預貸率は100%です。

とはいえ、100%貸し出しに回してしまうと、預金を引き出しにきた顧客に対応できなくなるので、理屈のうえでは、預貸率は100%以下、80%とか90%というあたりがいいわけです。しかし、昨今は消費者の将来不安から預金は増え、一方、設備投資の冷え込みなどから貸し出し需要は伸び悩み、預貸率は100%を大きく下回っているのが実情です。現在、全国の銀行114行の預貸率は平均で66.47%(東京商工リサーチ 2017年3月期決算)で、ここ数年、預貸率は年々低下傾向にあります。

金あまり時代で設備投資資金需要などが落ち込み、金融機関はどこも預貸率を高めなければならないと懸命になっています。これは借り手から見れば、融資を拡大する大きなチャンスだといえます。各金融機関の預貸率などの数字はネット検索で簡単に調ベられます。預貸率はまた、その金融機関が貸し出しに積極的であるかどうかを示す目安にもなります。貸し出しに積極的な金融機関は預貸率が高くなり、反対に貸し出しに慎重な金融機関は預貸率が低くなるわけです。

私は、預貸率が60%を切る金融機関は融資に積極的ではないと思っています。こうした金融機関と取引しても将来性はないので、私は最初からおつき合いしないようにしてきました。ちなみに残りの預金残高は債券や株式で運用して利益を得るようにしています。各金融機関がより効率のいい運用に奔る傾向が強まったこともあって政府は貸し出し需要をより盛んにするように促し、最近はようやく貸し出しを増やす傾向が見られます。いずれにしても、これからは経営者自身がさまざまなデータを把握して、自社に最もふさわしい金融機関を自ら選別する能力が求められている、といえるでしょう。金融機関の選定で会社の将来も変わることを知っておいてほしいものです」(185ページ)

三條さんのご指摘は、私も正しいと思っていますが、私が銀行に勤務した経験から、僭越ですが補足をしたいと思います。まず、規模が小さい金融機関ほど、預貸率が低くなる傾向があります。その理由の1つ目は、規模が小さい金融機関は、融資相手の会社が倒産し、融資金を回収できなくなった時の「相対的な影響」が大きいからです。

例えば、1億円が回収不能になったときの影響は、融資総額が1兆円の金融機関よりも、融資総額が10兆円の金融機関の方が、肌感覚で10分の1になるということはご理解いただけると思います。したがって、こちらも明確な基準はありませんが、融資総額が2兆円以下の金融機関は、積極的にメインバンクになることはせず、他行がメインバンクの会社のサブメインバンクのポジションに留まろうとします。その結果、融資額はあまり増えないということになります。

理由の2つ目は、規模の小さい金融機関は、融資回収ノウハウが比較的少ない傾向にあります。これは、前述したように、規模が小さい金融機関はメインバンクとなっている会社が少ないことから、融資相手の会社が倒産したときの対応を経験する従業員も少なく、その結果、ノウハウもあまり蓄積されません。そのため、融資相手の会社の業況が悪化したときは、思い切った支援を行うことができる決断をしにくくなり、その結果、融資額が少なくなります。ちなみに、思い切った支援とは、いわゆる事業再生をイメージしていただきたいと思います。こちらは、主に、その地域に本店のある地方銀行が担うことが多いようです。

もし、地元の有力企業の業績が悪化し、倒産してしまうと地域経済への影響が大きくなることが明らかな場合、地方銀行はその有力企業への融資の一部の債権放棄をしたり、人材を派遣したりして、事業が継続できるようにします。(業績が悪化した会社のすべてが、このような支援を受けることができるとは限らないので、ご注意ください)なお、このような債権放棄をともなう支援は、地域で2番手以下の銀行は比較的少ないようです。したがって、三條さんは、預貸率の高い銀行と取引することをお薦めしていますが、それは結果として、地域1番手の地方銀行ということになるでしょう。

それから、もう1つご注意いただきたいことは、金融機関の規模は、一般的に、地方銀行第二地方銀行→信用金庫→信用組合の順に小さくなりますが、融資総額が1兆円未満の地方銀行もあったり、融資総額が2兆円を超える信用金庫もあったりします。したがって、単純に、「地方銀行だから融資総額が多い」、「信用金庫だから融資総額が少ない」と判断せずに、それぞれの金融機関のディスクロージャー誌(多くの場合、ホームページで閲覧できます)を確認するようにしましょう。

2025/11/25 No.3268