鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

融資の返済だけを優先させてはいけない

[要旨]

経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、あるレストランチェーンは、急激に事業拡大をしましたが、その後、客足が遠のき、資金繰が苦しくなったものの、銀行からの支援を継続してもらうために、融資返済を優先し、税金、支払代金、給与などの支払いを遅らせたそうですが、税金を滞納すると差押えを受けることがあり、その後は融資を受けることができなくなるので、注意が必要ということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、無借金経営が理想的であり、それを実践している経営者がそのことに胸を張っていることがありますが、それは誤っており、なぜなら、銀行は融資取引のない会社から急に融資の申込があっても、それを断るので、自社の業況がよいときに融資取引をしておき、自社が窮地になったときも受けやすくしておくことが賢明だということについて説明しました。

これに続いて、三條さんは、自社の資金繰がきつくなったときは、税金などの滞納は避けなければならないということについて述べておられます。「私の印象では、多くの経営者が銀行と“ペっびり腰”でつき合っている傾向があると感じています。融資を止められたらたちまち事業が行き詰まる。だから銀行は怖い。そう思い込み、多少、手元事情が苦しくなっても、銀行の返済だけは滞らせてはいけないと、ほかの支払いをストップしても銀行には律儀に返済を最優先するのです。その結果、どうなるか。ある飲食店チェーンのお話をしましよましょう。

チェーン店を30店舗ほどにまで広げ、かなりの知名度もあったある飲食店チェーンのケースです。10年ほど前に創業し、順調に売上が伸びたことから銀行の積極的な支援を受け、特にここ数年は急ビッチで出店攻勢をかけ、好調な業績でした。飲食業界は競合店が多いうえに顧客は必ず飽きるのです。行列ができる店と評判だったところにその後行ってみると結構すいていたという例は枚挙に暇がありません。この店も例外ではなく、徐々に客足が落ちてきて、ついに資金繰りが苦しくなってきてしまいました。

このとき、経営者は銀行への返済を最優先し、取引先の支払い、さらには税金や従業員の社会保険費用などを滞納するようになっていったのです。取引先の支払いが遅れれば、当然、仕入れに支障が出るようになり、毎日の商売に即、影響が出てきます。税金や社会保険料は滞納すると驚くような高い延滞金が課せられます。さらに、こうした延滞金があると銀行から新たに融資を受けることはほばできなくなってしまいます。税金の滞納には、差し押さえという伝家の宝刀があることも忘れてはいけません。つまり、支払いにも優先順位がある!!

取引先ヘの支払いや税金・社会保険料などがファースト。銀行への支払いは一時的に『ちょっと待ってください』で切り抜ける。このことを脳裏に刻み込んでおいてください。先にあげた飲食店は取引先や税金などを滞納してしまった結果、追加融資を断られ、八方ふさがりになってしまいました。現在は、まず優先順位の高いところの滞納をクリアにしたうえで銀行にも理解を求め、経営再建の道を模索中です」(143ページ)

三條さんは、融資の返済よりも、税金や社会保険料の支払いを優先すべきと述べておられますが、私は、三條さんとは考え方が異なります。だからといって、税金や社会保険料の支払いよりも、融資返済を優先しなければならないということではありません。どちらも延滞させてはいけないのです。仮に、三條さんのお考えの通り、税金や社会保険料の支払いを融資返済に優先することで事業をより継続できるようになるとしても、その逆の場合と比較して、それは五十歩百歩であり、根本的な問題解決にはなりません。

では、融資、税金、社会保険料の支払いを延滞させないようにするにはどうすればよいのかというと、資金繰がきつくなる前に、銀行に相談をすることが最善です。こうすることで、追加融資、返済猶予(いわゆるリスケジュール)、販売先の紹介、改善策の提案などの支援を受けることができます。もちろん、このような対応が100%奏功するとは限りませんが、三條さんが例に挙げたレストランのような状態になるよりは、成功する確率はかなり高いです。なぜなら、早めに銀行に相談する方が、選択肢が多いからです。

しかし、資金繰の悪化について銀行に相談するとき、経営者の方の心理的な壁は高いと思います。そういった相談をすると、今後、銀行から支援を断られるかもしれないと考えてしまうと、相談することを躊躇してしまうでしょう。でも、前述したように、早めに相談することの方が選択肢が多いので、状況を立て直すことができる可能性が高くなります。したがって、資金繰については、なるべく早く銀行に相談することをお薦めします。

2025/11/24 No.3267