鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

経営者の勘だけで経営すると倒産する

[要旨]

経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、三條さんの相談者には、毎月5日まで月次決算書を作成し、中身を十分理解するように助言しているそうですが、服飾販売業のある会社は月次決算書を毎月作成し、その数字の示すところを十分チェックするようにしたところ、経営状態がみるみる改善したことから、経営者の勘だけで経営していたのが間違いだと気づいたようだということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、三條さんのクライアントの米穀卸売業の会社は、米の需要が減少している中で、その需要を掘り起こすために、独自に調査をした結果、パンと比較して、米は調理に手間がかかると考えられていることがわかり、大手メーカーがなかなかつくらない、地域独自の炊き込みご飯のおにぎりやレトルト品を製造し、地域のコンビニやキオスクなどに営業をかけ、販売するルートを開拓していったということについて説明しました。

これに続いて、三條さんは、経営者は自社の資金繰に関して正確に把握していなければならないということについて述べておられます。「経営とはせんじ詰めればお金のやりくりです。お金をどう回していくか。それがうまくいっている企業は安定、成長していきますが、お金の循環が滞ってしまえば、それで終わり。どんなに輝かしい理念があろうと、画期的な商品があろうと、お金が回らなければそこで経営破たん、倒産です。そうならないために必要なのは経営者が常に会社の数字をチェックし、把握していることです。

『それは当然でしょう、もちろん私も売上をチェックしていますよ』、経営者はそういいます。でも、会社経営にはいろいろな数字がからんでいるもの。それらの数字のすベてを把握しているか。それぞれの数字の裏に何が隠されているか。それをちゃんと理解しているか。それらをちゃんと理解している経営者は、順調にビジネスを発展させていきます。ところが実際は、数字はちゃんとつかんでいると豪語する経営者のほとんどが、数字は知っていても、その本当の意味を理解していないのです。

数字の中身を理解できていないのでは、暗闇のなかを進んでいるのと同じです。よくこんな状態で進んでいけるものだ、とかえって心配になってしまいます。実際に、その多くは黒字倒産という憂き目にあうのです。売上から経費を引けば利益は出ている。だから安心だと思っていても、キャッシュフローが足りない。帳簿上では利益があっても現実に回すキャッシュがない。そして倒産してしまうわけです。

倒産の54%は、数字上は黒字だという調査結果があるくらいです。特に、負債状況はどうなっているのか、会社の返済能力はいくらなのか、いつ、いくら返済しなければならないのか、つまり、出ていくお金を正確に把握し、その意味を理解していなければなりません。回転率や労働分配率自己資本率など、むずかしい数字は知らなくてかまいません。また、数字は日々変わるもの。頻繁にチェックしていなければ意味がありません。

私の相談者でも、PL/BSを毎月分析できていない企業が少なくないのです。前月、いくら儲かったかがわかっていない。それで翌月の経営が不安にならないのでしょうか。前月の在庫状態がわかっていないことも驚きです。私には理解できないぬるさです。私は、相談者には毎月5日までにPL/BSを作成し、中身を十分理解するように、といっています。

これを実施することは資金管理、在庫管理を徹底することにつながります。実際、服飾販売業のある会社はPL/BSを毎月作成し、その数字の示すところを十分チェックするようにしたところ、経営状態がみるみる改善していきました。経営者の勘だけで経営していたのが間違いだと気づいたようです。基本的な数字をしっかり読み、把握することは経営の基本のキ、だということです」(124ページ)

経営者が自社の財務データを把握していなければならないということは、ほとんどの方がご理解されると思います。ところが、三條さんが、「数字はちゃんとつかんでいると豪語する経営者のほとんどが、数字は知っていても、その本当の意味を理解していない」とご指摘しておられますが、私も同様のことを感じています。

というのは、「当社は月次決算書を作成しているし、自分もそれを見ている」と言っている経営者の方は少なくありませんが、その月次決算書を翌月10日までに作成している会社は10%もいません。ただ、数か前経ってから作成される月次決算書には目を通しているかもしれませんが、数か月前の月次決算書では改善活動にはあまり役に立たないわけですから、単に見ているだけで、何らかのアクションを起こしていないでしょう。

ところが、三條さんは、「服飾販売業のある会社はPL/BSを毎月作成し、その数字の示すところを十分チェックするようにしたところ、経営状態がみるみる改善」したとご指摘しておられるように、月次決算書に基づく改善活動は効果があります。このように述べると、「月次決算書を作成するだけでそんなに業績がよくなる訳はない」と考える経営者の方も多いと思います。もちろん、それは、経営者の方がある程度の会計リテラシーを持つ必要があります。

でも、経営者の方が月次決算書を見て改善点を把握し、それを毎月繰り返すことの効果は1か月ではわずかであったとしても、6か月、12か月、24か月と繰り返して行けば、その積み重ねは大きなものとなるはずです。また、月次決算書を見ることで、経営者自身も、日常的な活動において、効率的な経営を意識することになると思います。そのような経営者の経営する会社の業績は、成行的な管理しかしていな経営者の経営する会社の業績と大きく差がつくことは間違いないと、私は考えています。

2025/11/22 No.3265