鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ブームになってから参入しても手遅れ

[要旨]

経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、例えば、ラーメンブームに乗り、ラーメン店を始めたいという経営者の方から相談を受けることがありますが、ブームになった時点で参入しても、その後はブームが下火に向かって行くことになるので、ブームに頼らずに、おいしいラーメンを開発し、顧客を少しずつ増やして行こうという姿勢が望ましいということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、三條さんにご相談する経営者の方の多くは、こらからはどのような事業をすればよいのか、自らは考えようとしないそうですが、セブン-イレブンは積極的な試行錯誤による商品開発でライバルに差をつけているように、フットワークを軽くして、朝令暮改で経営改善に臨むことが成功につながるということについて説明しました。

これに続いて、三條さんは、ブームには乗らない方が望ましいということについて述べておられます。「一時期、ラーメンブームといわれたころ、私のもとにも、『いま、ラーメンプームでしよう。私もラーメン屋を開業したい。ラーメン屋といっても1店舗では終わらない。ゆくゆくは全国チェーンにして、そのラーメンチェーンを起爆剤に、いろいろな飲食業を経営して、食のコングロマリット(複合企業)を目指したい』と相談にこられる方が相当数いました。

なかなか立派で壮大なビジョンのように聞こえます。でも、こういう人に限って、やがて失敗し、業界を去っていくことになるのがオチ。プームを追いかけて、成功した人はいません。なぜなら、プームは必ず去るからです。プームといわれ、人が騒ぎ始め、行列ができるようになったときはすでにプームのビーク。水面下では、下り坂に足がかかり始めています。そこから追いかけても、プームの陰りとともに、衰退の道を歩んでいくだけです。

これまでにもラーメン業界には、他には例を見ない野菜てんこ盛りのラーメンを考案した『ラーメン二郎』や、とんこつスープを東京にもち込んだ『なんでんかんでん』など、一時代を築きあげたラーメン屋がありました。しかし、ラーメンで年商数億円を稼ぎ出していたこれらの店も、いまは『家系ラーメン』に人気を奪われてしまています。プームや流行はいつか陰り、早足で去ってしまうことが、あらためて身にしみます。プームだからやりたいではなく、試行錯誤を繰り返した結果、絶妙のスープができた。

このスープを使ったラーメンの味は絶対ほかには負けないおいしさだ、これを1人でも多くの人に食ベてもらいたい、こうした動機からラーメン屋を立ち上げれば、プームとは関係なく、長く繁盛するラーメン屋になる可能性は大きいでしょう。かつて、生キャラメルの大プームで大きな話題になった北海道の花畑牧場。いくら補充しても、補充するそばから売り切れになったというほどのプームになった生キャラメルはいまではいつでもすぐに買える商品になっています。一時期、この牧場は倒産したという噂まで流れたものでしたが、実は現在は生キャラメルの大プーム期以上に繁盛しているそうです。

あの熱狂的といいたいような大プームと、それが去っていくときの引き足の速さを痛いほど経験した牧場経営者は、現在、その経験を生かして、スイーツやチーズ、クオリティの高い豚肉やその加工品など、多様な商品展開に切り替えています。販売展開も、生キャラメルに次いで、次々発売されているオリジナルスイーツ類の一般販売と安定的・大量購入が約束されている業務用需要の掘り起こしなど、多面展開にシフトしています。いま、この牧場のスローガンは、『プームを起こさないこと!』だそうです」(104ページ)

京セラ創業者の稲盛和夫さんは、ご著書、「アメーバ経営:ひとりひとりの社員が主役」で、黎明期の同社の状況について、次のように述べておられます。「創業後の京都セラミツクは、いままで市場に存在しなかった、さまざまな、ファインセラミック製品を開発し、次々に製品化していった。そのため、会社の規模は急速に拡大し、最初は28名だった従業員数も、5年もしないうちに100名を超え、やがて200名、300名と増えていった。

それにもかかわらず、当時の私は、製品の開発から、製造、営業まで、ひとりで走り回っていた。もう、私自身の体がもたないし、仕事もうまく回らなくなる。『中小企業と腫れ物は、大きくなると潰れる』-中小企業がどんぶり勘定のままで大きくなれば、管理不可能となり、潰れるとよく言われるが、当時の会社は、すでにその状況に近づいていた」(27ページ)

花畑牧場も、京セラも、急激な事業拡大は避けるべきと考えているわけですが、それは、管理体制や、生産体制は、需要に追いつける速さで増加させることはできないので、需要に合わせた事業拡大は行うべきではないということだと思います。しかし、伸びつつある需要を逃すこともあまり賢明ではないと考えられますので、管理体制、生産体制の拡大は、可能な限り速くすることは望ましいと思います。これをもう一歩踏み込んで考えれば、社内体制の整備を最優先して実践すれば、事業拡大も最速にすることができると考えることができます。

中小企業経営者の方の多くは、事業を安定化させるために、まず、売上を増やすことに最大の関心が向くと思います。もちろん、それも大切なことですが、売上の増加にだけに注力しすぎると、せっかくの受注も、キャパシティーオーバーによって断ることになったり、または、会社組織にひずみを起こして、事業を継続できなくなったりしかねません。そこで、会社全体を見る立場にいる経営者の方は、バランスのとれた働きかけを行うことが大切になると、私は考えています。

2025/11/19 No.3262