鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

積極的な『朝令暮改』が成功につながる

[要旨]

経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、三條さんにご相談する経営者の方の多くは、こらからはどのような事業をすればよいのか、自らは考えようとしないそうですが、セブン-イレブンは積極的な試行錯誤でライバルに差をつけているように、フットワークを軽くして、朝令暮改で経営改善に臨むことが成功につながるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、中小企業経営者の多くは、よい人材に恵まれないことを嘆いていますが、大企業と比較して中小企業は安定性に欠いていることから、中小企業はよい人材は入社しないという前提で、自社で実務経験を積ませることで人材育成をしなければならないということについて説明しました。

これに続いて、三條さんは、経営者は経営環境の変化に鋭敏でなければならないということについて述べておられます。「『なぜ、もっといろいろなトライをしてみようとしないのですか』1,000余名の相談者と接しどきて、私はつくづくそう思っでいま方。あるジャンルで新規ビジネスを立ち上げたのだがうまくいかない。すると、もう音をあげて、『このビジネスはもうダメです、でも、ほかに何をやっていいかわからない』と私のとこみに駆け込んでくるのです。もちろん、私も一緒になって知恵を絞りますが、その場合も、自身は何も考えようとしない。こんな経営者が少なくないのです。

そこで、私はコンサルティングのたびに、『これがダメならこういうことは考えられないの?』などと質問攻めにして相談者を追い込みます。すると、さすがに何か考えてくる経営者もいるのですが、ほとんどはそれまでのビジネスのアレンジでしかありません。いままでの路線でいい結果が出なかったから苦しんでいるのに、なぜ、新たな領域や新たな方法論を考えようとしないのか。私は毎回、首をかしげています。『思いつくことを次々、小さな規模でやってみて、トライアルの結果、いいものをやっていったらいいじゃないですか』。経営は試行錯誤がとても大切なのです。

コンビ二業界では、ファミリーマートとサークルKサンクスの合併により店舗数で第2位にまで迫ったファミマ。しかし、1店舗あたりの売上はセプンイレプンが圧倒的1位。コンビ二は一番近い店を利用するのでは、と考えがちですが、最近は弁当やおにぎりなどの主力商品のクオリティで選ぶ顧客が増えているのです。セプンイレブンはここに着目。弁当などの食品を中心に矢継ぎ早に新製品を売り出し、一方、売れないものは、長い開発時間をかけた商品であっても、1週間程度で店頭から引き上げるという変幻自在戦法で、圧倒的な強さを発揮しています。

コンビニにはいろいろなものが並んでいますから、おにぎりを買いに来たついでにこれもというついで買いも多く、こうした戦法で、店舗あたりの売上で他チェーンに大きな差をつけているというわけです。くるくる方針を変えたり、次々、売り物を変えたりすることなどを『朝令暮改』といい、普通は避けるベき行動とされています。しかし、現在は変化の時代です。変化は逆に大きな強みになっています。積極的に『朝令暮改』を仕掛けていく経営者。いまの時代には、むしろ、こうしたフットワークの軽い経営者のほうが成功の確率は高いのです」(93ページ)

ほとんどのビジネスパーソンは、英国の生物学者チャールズ・ダーウィンが残した、「生き残る種とは、最も強いものではない、最も知的なものでもない、それは、変化に最もよく適応したものである」という格言はご存知であると思うし、また、これはビジネスにも当てはまると考えておられると思います。その一方で、三條さんも、三條さんにご相談に来る方が、「いままでの路線でいい結果が出なかったから苦しんでいるのに、なぜ、新たな領域や新たな方法論を考えようとしないのか、私は毎回、首をかしげる」と述べておられますし、私も、経営コンサルタントとして、同様のことを感じています。

そのような経営者の方が少なくない状況について、私は、次のような要因があると考えています。1つ目は、事業そのものの目的を経営者の方が固定してしまっているからだと思います。これは、経営者の方が、いわゆるマーケティング・マイオピア(近視眼的経営)に陥ってしまっているということです。その事例で有名なのは、かつての米国の鉄道会社は、顧客は鉄道に乗りたいと思っていると考えていたものの、実際は、鉄道に乗りたいのではなく、移動手段として鉄道を利用していただけであり、自動車が普及すると、鉄道会社は顧客を失ってしまったというものです。

2つ目は、人は誰でも、心の深いところでは、現状を維持しようとしてしまうということです。ダーウィンの進化論にならい、ビジネスも経営環境に従って変えなければならないと理解はしていても、自らの行動を変えることはなかなか難しいものです。私自身も、健康的な体型に変えなければならないと思いつつ、なかなか、運動を習慣化できないので、日々、反省しています。3つ目は、三條さんが、「思いつくことを次々、小さな規模でやってみて、トライアルの結果、いいものをやっていったらいいじゃないぁ」と述べておられますが、経営とは試行錯誤の繰り返しを行うことと考えている経営者の方はあまりいないと、私は考えています。

ちなみに、私がこのようなことを述べると、「当社も常に試行錯誤をしている」と反論する経営者の方もおられますが、そのようにご主張する経営者の方の中に、例えば、毎月、業績を確認している方はほとんどいないと感じています。さらに、これに対して、「毎月の業績確認をしなければ試行錯誤をしたことにならないのか」と反論する方も多いと思いますが、詳細な説明は割愛しますが、効果のある試行錯誤をするためには、毎月の業績確認は欠かせないと思っています。

4つ目は、三條さんはセブン-イレブンの事例を挙げていますが、「試行錯誤そのものが経営」ととらえて経営に臨むことが欠かせないということです。これは私の肌感覚で恐縮ですが、中小企業で試行錯誤に力を入れている会社はまだ少数派だと思います。この件については、まだ明確な根拠を示すことができないのですが、セブン-イレブンの業績がライバルと比較して高い要因は、試行錯誤にどれくらい注力しているかの差だと、私は考えています。

2025/11/18 No.3261