[要旨]
経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、社員と一緒になって汗を流していると、いかにもよい経営者だと思いがちですが、社長には社長の仕事があることを自覚する必要があり、社員と一緒になって汗を流すことより、もっと効率的に売上をあげる方策はないかと考えたり、どのように活動して、事業を拡大発展していくのかを考えたりしていかなければいけないということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、かつて、知人が、途上国を支援しようとする意欲から、リサイクルビジネスを起ち上げたものの、海外のパートナーに裏切られ、事業が行き詰まったそうですが、このように、ビジネスには夢も必要ではあるものの、きちんと採算を得る管理能力を持たなければならないということについて説明しました。
これに続いて、三條さんは、経営者は経営者の役割を十分に担うことが求められているということについて述べておられます。「『一生懸命、がんばっています』といい、実際に寝る間も惜しんで仕事をしているのに、いっこうに成果が上がらないといってきた相談者がいます。事業内容は食品販売。話を聞くとたしかに朝早くから夜遅くまで、長時間働いており、目いっばいがんばっています。
でも、『なんで事業をしているのですか?』と聞くと、『当たり前じゃないですか。メシを食ていくためです。家族もいるし、社員の生活もある。だから、なりふりかまわずがんばっているんです……。でも、もう体力の限界です。これ以上はがんばれません。利益は上がらないし、経営は苦しくなるばかり。なんとか現状から抜け出す方法はないでしょうか』と返事は半分、泣き声。こういう相談者はこの経営者だけではありません。
少しでも売上をあげなくては、と社員のお尻を叩き、社長自身もへトへトになって走り回っているこの経営者には酷ですが、こういうやり方ではこの企業の将来は絶望的です。経営者自身が毎日の業務に追われ、今日・明日・明後日くらいのことしか考えていないのですから。社員と一緒になって汗を流している、というといかにもよい経営者だと思いがちですが、社長には社長の仕事があることを自覚しなければならないのです。社員は手足を動かし、汗を流して動き回ること、つまり、実作業が主な仕事です。
一方、社長は、社員と一緒になって汗を流すことより、もっと効率的に売上をあげる方策はないかと考えたり、どのように活動して、事業を拡大発展していくのか、を考え続けたりしていなければいけないのです。戦略を定めたら、次に戦術策定ヘと移ります。相談者に『では、具体的な戦術を考えていきましょう。いま、最大のライバルはどんな企業なのですか?』、こう尋ねたとき、打てば響くような答えが返ってくることは、残念ながら、めったにありません。
日々、駆けずり回るだけでエネルギーを使い果たしてしまっているのでしょう。ライバルのことも、コアターゲットとするベき顧客のこともわかっていない。ライバル会社に勝ためには、何をどうすればいいのか。顧客に自分の会社を選んでもらうためには何を訴求すればいいのか。この2点がわかっていないと、的を射た戦術を立てられないことを肝に銘じてください」(53ページ)
事業活動においてマネジメントの重要性の理解は広まりつつあるものの、三條さんにご相談をした方のように、依然として、努力が業績に結び付かずに空回りしている方は少なくないと、私も感じています。そのような経営者の方は、「安くてよい品を販売すれば業績もよくなる」と考えているのではないかと思います。
確かに、かつては、よい商品を安く販売すれば、業績が向上した時代がありましたが、現在は、よい商品が安く販売されることは当たり前であり、さらにどのようなベネフィットを提供できるか問われる時代になっています。ですから、三條さんが、「ライバル会社に勝ためには、何をどうすればいいのか、顧客に自分の会社を選んでもらうためには何を訴求すればいいのか」を、経営者の方が考えなければなりません。
しかし、三條さんが、「社員と一緒になって汗を流している、というといかにもよい経営者だと思いがちですが、社長には杜長の仕事があることを自覚しなければならない」とご指摘しておられるように、経営者経営戦略、経営戦術を考え、それらがきちんと遂行されるような働きかけをすることがそもそもの役割です。ところが、従業員の方と一緒に汗を流すことで経営者の役割を果たしていると考えてしまう方も少なくないので、注意が必要です。
2025/11/16 No.3259
