[要旨]
経営コンサルタントの三條慶八さんは、かつて、知人が、途上国を支援しようとする意欲から、リサイクルビジネスを起ち上げたものの、海外のパートナーに裏切られ、事業が行き詰まったそうですが、このように、ビジネスには夢も必要ではあるものの、きちんと採算を得る管理能力を持たなければならないということです。
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今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんが、かつて、貸ビル業の会社を経営していたとき、大手の会社と同じ土俵にのらないようにするために、内装つきの店舗ビルを建築してテナントに貸したところ、成功を収めたそうですが、このように、中小企業は大企業と異なる顧客を対象にすることが望ましいということについて説明しました。
これに続いて、三條さんは、経営者は夢だけに囚われ過ぎないように注意しなければならないということについて述べておられます。「夢を実現させてついに会社を立ち上げた!その喜びがどんなに大きいものだったかは、私にもわかります。ところが、実際は夢だけでは経営は成り立っていきません。夢は夢として、実際の事業は地に足をつけて、しっかり現実的に運営していかなければ、あっという間に行き詰まる。
それをいま、実感している社長も多いでしょう。『世界には困っている人がたくさんいる。日本には、いろんなものがあり余っている。この2つをうまく結びつけてうまく循環させていけば、途上国の人はうるおい、日本では余っているものを有意義に活用できる』こんな夢を描いて、リサイクルビジネスを立ち上げた人がいます。余っているところから足りないところにものを送り届ける、という構想はたしかに成り立ちそうのだと思えます。
実際、立ち上げてから1年ほどは仕事は順調に進んでいき、行く先々で、彼の構想は素晴らしいアイデアだとほめまくられ、メディアにも取り上げられました。ところが気がつくと、現金が全然入ってこないのです。途上国からの入金がない。調ベてみると、現地で意気投合してパートナーになった人がお金をもって逃げてしまっていたことがわかりました。これがきっかけになって、日本で働いていたスタッフも1人去り2人去り……。人もなし、お金も不足……。経営はとっくに黄信号を灯し始めているのに、この経営者はまだ目が覚めません。
自分の描いた構想は立派なもので、これが成立しないのなら、世の中のほうが間違っていると信じているのです。たしかに、日本社会は、福祉事業というコンセプトでビジネスをするにはまだ未成熟です。だからこそ、その領域でビジネスをするなら、慎重なうえにも慎重にあらゆることを想定し、数字もしっかりはじいて経営計画を立てなければいけないのです。夢は想像の世界、非現実です。一方、経営はまさしく現実であることを、いつも胸に刻み込んでおくことが大事です。
では、夢はビジネスにならないのか、というとけっしてそんなことはありません。学生時代にマザー・テレサの記録映画を観たことをきっかけに、人生の生涯テーマを『ポランティア』と決めて起業。しかし、個人の力では限界を感じてビジネスを興し、その利益でポランティア活動を行う、というビジョンをもとに会社をつくり、成功させている経営者もいます。後者の場合は、夢は夢として追い求めながら、夢の実現にはお金が必要であるという現実的な視点をけっしておろそかにしませんでした。
ある起業支援ビジネス会社が『起業する人の理由』を調ベたところ、『お金を儲けたいから』という理由を一番にあげた人はゼロだったそうです。一番多かったのは『夢だから』、『自分がやらなければいけないという使命感から』でも、どんなに立派な動機でも、かっこいい目的でも、会社がつぶれてしまったら何にもなりません。経営者になるということは、夢を追いかけながらお金も回していく、その両方をうまくやり遂げていくことです。そういう社長であれば、人もちゃんとついていき、夢もビジネスも育つていくでしょう」(49ページ)
三條さんも述べておられるように、起業する人の動機は、「お金を儲けたいから」ではなく、「夢だから」、「自分がやらなければいけないという使命感から」というものが多いと、私も感じています。そして、事実、その夢を実現させている経営者の方もいます。例えば、2014年版中小企業白書では、「高齢化・過疎化といった地域の課題を、事業を通じて解決しようとする中小企業・小規模事業者の取組」が紹介されています。
確かに、白書で紹介されている事例は、容易に成功したものではないと思います。でも、一方で、現在は、社会的課題を解決することがビジネスチャンスにもりつつある時代だと思います。そういった観点から、社会的課題を解決する事業を始めることは、着眼点としては問題ないと思います。ただ、少し意地悪なことを述べると、そのような事業を起業する方たちの仲には、「自分たちは社会的課題を解決する事業を行うのだから、事業は成功する」という、少し甘い見通しを持っている人も少なくないと、私は考えています。
確かに、社会的課題があるということは、確実な需要があるとは思いますが、上から目線で恐縮ですが、やはり、マネジメントスキルやビジネスセンスを持った人が取り組まないと、事業は成功しないことも事実です。そこで、私は、夢を実現しようとすることは、事業に意欲的に取り組むことができる要因にはなるものの、意欲だけでは成功できないということも理解し、しっかりとマネジメントスキルを身に付けなけることが欠かせないと考えています。
2025/11/15 No.3258
