鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

売上が少ないのは上司と指導法の問題

[要旨]

ネッツトヨタ南国の相談役の横田英毅さんによれば、同社では、営業スタッフの売上げが上がらないのは、本人の責任ではなく、上司とその指導法に問題があると考えているそうです。そこで、同社では、営業スタッフは営業活動の内容を記録し、それを上司が見て、改善点はどこかを質問することで、営業スタッフが改善点に気づくようになるのと同時に、上司も適切な指導法を習得していくということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、ネッツトヨタ南国の相談役の横田英毅さんのご著書、「会社の目的は利益じゃない-誰もやらない『いちばん大切なことを大切にする経営』とは」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、横田さんは、かつては、従業員の方の自動車の販売台数に応じて評価をしていましたが、その後、どのようなプロセスを得たかも評価の対象にするようにしたということについて説明しました。

これに続いて、横田さんは、ネッツトヨタ南国では、上司が部下の指導をするときは、部下に対して質問する方法で指導をしているということについて述べておられます。「わが社の自己申告型人事考課制度は、普段の一人ひとりの判断や行動が、会社の価値基準に基づいているかを確認しつつ、評価を本人にフィードバックするしくみとなっています。こうすることで、社員の成長を促し、同時に自身の成長が実感でき、社員満足の向上に結びつくよう、工夫されています。つまり、単なる給与を決定するツールとは、似て非なるものなのです。

なお、マネージャーに対しては、『全スタッフによるマネジメントリーダーの評価アンケート』も行っています。これは部下が上司を評価するためのしくみで、各マネージャーの視野の広さや先見性といった頂目について、全スタッフが5段階で評価します。この評価アンケートは無記名で行います。人は誰でも、自分が素晴らしい人間だと思いたい、そう錯覚していたい気持ちがあるものですから、本当の自分を知るためには、自分の姿を見直す『鏡』が必要です。

部下がマネージャーを評価するこのアンケートは、その『鏡』の役割を果たすものなのです。ちなみにわが社では、一人の営業スタッフの売上げが上がらないのは、本人の責任ではなく、上司とその指導法に問題がある、と考えます。指導法といっても、成績が上がらない人に『上がってないじゃないか』と強く言う、その類の指導ではありま世ん。『売れないならああしろ、こうしろ』と、指示・命令を与える指導でもありません。

では何をするかといえば、とにかく聞くのです。『どういう営業をしているの?』、『売上げが上がらないのはなぜだと思う?』と、まず聞きます。そして、営業活動の記録を自分で集計して見せてくれるように言います。そこで、営業スタッフは自分の活動記録をつくり始めます。この活動記録は、過去数か月にわたる日々の訪問件数、お客様による来店件数、電話・ハガキ・手紙の件数やその内容、サービス部門への点検や車検の入庫状況などです。

自分の活動のプロセスを追って報告書をつくると、その作成段階で、本人には反省せざるを得ないポイントがいくつか浮かび上がってきます。それを報告してもらうと、指導する側としても、日頃どういう指導をしなければいけなかったのか、どこに注目しなければいけなかったのかがわかります。報告書をつくることによって、営業スタッフ自身、自分の問題点が明確にわかると同時に、上司も、本人への指導の仕方をどう変えればいいかがわかるのです」(214ページ)

私がこれまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、従業員の方が能力を高めたりスキルを身に付けたりできるかどうかは、その従業員の方自身の責任という会社が圧倒的に多いようです。さすがに、かつての時代のように、部下は上司の背中を見て学べという会社は少なくなり、部下の方の成長を支援する会社は増えていると思いますが、それでも、最終的には成長するかどうかは本人の問題という会社がほとんどだと思います。

確かに、従業員の方が成長するためには、本人が成長しようとする意欲を欠かすことはできません。しかし、従業員の方に対して求める成長のための努力の量と比較して、上司に対して求める部下を効率的に育成するスキルや、部下を正しく評価するスキルは少ないと、私は感じています。一方、横田さんは、ネッツトヨタ南国では、「営業スタッフの売上げが上がらないのは、本人の責任ではなく、上司とその指導法に問題がある」と考えていると述べておられますが、部下の方だけでなく、上司の育成スキルも高くすれば、部下の方が速く成長することになり、業績の向上も速くなると考えることができます。

ただ、繰り返しになりますが、日本の会社の多くは、管理職に求める能力のうち、部下を育成する能力の割合はあまり高くないと感じています。このような状況になっている要因はいくつか考えられますが、結局、前述したように、従業員は自力で能力を高めるものだという意識が、経営者の間で強いのだと思います。でも、恐らく、多くの会社経営者の方は、「部下がなかなか成長しなくて困っている」と感じていると思います。

そうであれば、部下の方だけでなく、上司からも部下の方の成長を促すための働きかけをする方が、部下の成長が速くなることは間違いありません。そして、そのことによって会社の業績の向上が加速するということを、横田さんがネッツトヨタ南国で証明してくださっていると私は考えています。

2025/11/7 No.3250