[要旨]
経営コンサルタントの大坂靖彦さんによれば、業績には波があり、赤字になってしまうことはあるものの、3期連続赤字になると、何らかの対策を講じる必要があるということです。そこで、賞与を減らしたり経費を減らす努力をしたりして業績が改善できればよいのですが、それでも回復しなければ、抜本的な業績の改善策を講じる必要があるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの大坂靖彦さんのご著書、「中小企業のやってはいけない危険な経営」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、大坂さんによれば、かつて、中規模の玩具店が、銀行から資を受けられるからという理由で拡大路線をとったものの、大型店の進出により、競走に敗れたということがあったことから、事業展開の判断には銀行から融資を受けられるからという受動的な判断をせずに、きちんと経営者自らが事業の展望を精査して判断をしなければならないということについて説明しました。
これに続いて、大坂さんは、赤字が続いたときは抜本的な対策を講じなければならないということについて述べておられます。「事業には必ず好不調の波があります。想定外の不調の波がきて、ある期の決算が赤字となってしまうことは、やむを得ないでしょう。場合によっては、2期連続で不調が続いてしまうこともあります。しかし、これが3期連続で赤字となると、話はだいぶ変わります。
そもそも、ある期が赤字になったら、どんな経営者でも『これは大変だ』と感じるに決まっています。そして、売上拡大のための営業・販売強化策やマーケティング施策を打ったり、経費の削減を図ったりするはずです。社員に対して、どこまでを開示するかは会社によりますが、ある程度はピンチの状况を社内で共有して協力を求めるはずです。ボーナスを削減したり、部課で利用できる経費予算を減らしたりする会社も多いでしょう。それで、無事に業績がV字回復すれば、とりあえずは一安心です。
しかし、そういった努力をしたにもかかわらず、3期連続赤字になるのは、相当危機的な状况にあります。とても『がんばればなんとかなる』と、悠長に構えられる段階ではなく、はっきりいえば今までと同じことをやっていてはどうにもなりません。銀行の見る目も厳しくなり、新規の設備投資資金融資はもちろん、運転資金の借り換え融資も受けられなくなるかもしれません。そうなればキャッシュは急速に減少するので、最悪のケースではキャッシュ不足による倒産に至ります。
では、3期連続で赤字になってしまったらどうすればいいでしょうか。そんな状況になるとすれば、中心事業のビジネスモデルそのもの、あるいはオペレーションプロセス全体のどこかにその赤字を作っている要因があるはずです。それは会社の内部の問題かもしれませんし、事業環境の変化かもしれません。そこでまず、会社の内部・外部の環境をすベて見直し、全業務の棚卸し、総点検をします。そして、赤字を生み出しでいる原因を徹底的に掘り起こして特定します」(82ページ)
私がこれまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、経営者の方の多くは、自社の業績への関心が少ないと感じています。このように述べると、「本当にそんな経営者が多いのか」と疑問に感じる方がほとんどだと思いますが、私がそう感じる理由は次の通りです。1つ目は、自社の業績の確認は1年に1回だけで、それも、法人税を納付するタイミング、すなわち、決算日の約2か月後に顧問税理士の方から提出された決算書を見て初めて自社の確定した業績を知ります。
場合によっては、税理士の方が決算書を作成する前に、税理士の方から見込みの数値を示されて、社長の意向を確認されることもあると思いますが、それは速くても、決算日の1か月くらい前です。2つ目は、自社の決算書を見ても、あまり感心がない、というよりも、決算書に書かれている数値の意味がわかっていないということが多いようです。しかし、業績の悪い会社は資金繰が逼迫します。そこで、経理担当者から融資が必要になりそうだと伝えられ、銀行に融資の申し込みに行きます。
ところが、銀行職員から、「なぜ、貴社はなぜ赤字なのですか?」と質問されても、日頃から業績を確認しているわけでもないので、「競争が激化した」、「人件費が高くなっている」、「原材料や燃料費が値上げになった」という、一般的なことしか回答できません。さらに、「それらに対して、どのような対策をとってきましたか」とさらに質問されても、「これから新たな販売先を見つけます」、「経費削減に努めます」といった、受け身のことしか回答できません。
恐らく、多くの方は、会社経営は利益を得ることが目的と考えていると思います。そうであれば、経営者は、最低限、1か月に1度は業績を確認し、実績がよくなければ改善策をとると思います。しかし、実際には、そのようなことをしている会社は残念ながら割合としては低い状態です。このことを根拠として、私は、自社の業績への関心が少ない経営者が多いと感じているわけです。
当然のことながら、このような経営者が経営する会社では、赤字になっても能動的に改善のための活動は行われないでしょう。そして、資金繰が逼迫している状況に対して銀行に支援を仰ぐだけ、すなわち、「輸血」だけを行おうとし、根本的な対策、すなわち、「止血」を行おうとすることはないでしょう。なぜなら、赤字の要因、すなわち、傷口がどこにあるのかということに関心はないからです。
2025/10/16 No.3228
