[要旨]
オラクルひと・しくみ研究所代表の、小阪裕司さんによれば、福井県越前市にある宝木石材では、「親切、親身、丁寧」を徹底し、例えば、お墓には決して土足で上がらない、お墓の中にはさらに別の履物で入る、工事に使う重機はいつもワックスがけするということを実践していたところ、同社の仕事を見ていたある寺院の住職が、これからはその寺院の檀家からお墓のことで相談があったら、同社を紹介すると言われたということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、オラクルひと・しくみ研究所代表の、小阪裕司さんのご著書、「顧客の数だけ、見ればいい-明日の不安から解放される、たった一つの経営指標」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、小阪さんによれば、愛媛県にあるガソリンスタンドのパイオニア石油では、社長が部下に対して、セールスはしなくてよいが、五感で必要だと感じた時は声掛けをしろと伝えていたところ、顧客の自動車のタイヤの異常に気づいた従業員が、タイヤに刺さっていた釘を発見し、顧客に感謝されたことがあったそうですが、このような五感を使った声掛けは、「顧客」を増やすために効果が高いということについて説明しました。
これに続いて、小阪さんは、丁寧な仕事で顧客を紹介してもらった宝木石材の事例について述べておられます。「(福井県越前市にある)宝木石材では仕事の技術にこだわるのはもちろん、『親切、親身、丁寧』も徹底しています。お墓には決して土足で上がらない、お墓の中にはさらに別の履物で入るなどを徹底するとともに、工事に使う重機も、いつもワックスがけされていてピカピカです。また、そのお寺のトイレの掃除まで行っています。
ある時、こういうことがありました。ある宗派の本山での仕事がきっかけで、その下寺(本寺に所属する寺院)からの大きな仕事の相談を受けたのですが、その際、住職はこう言ったというのです。『本山の工事で、どれだけいい仕事をしてもらえとるかと。養生や片付け、トイレの掃除など、あんなことを見てもたら、他には頼めんわ。悪いけど、今までの石屋さんとは雲泥の差やわ』
この件に限らず、宝木石材にはその仕事ぶりの『親切、親身、丁寧』さを見たお寺から、『今後檀家さんからお墓のことで相談があったらあんたに任せたい』、『今まで特に決めてなかったんやけど、当寺のお出入りになってもらえんやろか』など、ご縁がどんどん広がっているそうです。
これはまさに、第2章でお話しした『顧客が増えると、顧客がもっと増える』ことにも通じます。『親切、親身、丁寧な仕事』はその原動力なのですが、今日、どの業界でも急激に減っているように感じます。だからこそこれから一層、『親切、親身、丁寧』な仕事は立派な『技芸』として、価値が高まっていくのです」(233ページ)
恐らく、ほとんどの中小企業経営者の方は、「自社でもお客様に親切で丁寧な対応を心がけている」と考えておられると思います。もし、本当にそれが実践されているのであれば、そのような会社は宝木石材さんのように、お客様から厚い信頼を得ることができると思うのですが、実際にはそのようになっていない会社も少なくないのではないでしょうか?
私は宝木石材さんのお仕事の様子を実際に見たわけではないのですが、お客様の心に残る対応は、どういったことをするということよりも、従業員の方が仕事に対する関心が強く、矜持を持って働いており、その結果として仕事が丁寧になっているのではないかと私は考えています。
すなわち、「お客様が見ているから丁寧に仕事をしよう」と考えて働くのではなく、「よい仕事をしてお客様によろこんでもらおう」という姿勢が必要だということではないでしょうか?では、従業員の方にこのような姿勢で仕事に取り組んでもらうようにするにはどうすればよいのかということについては、文字数の兼ね合いで割愛しますが、その基本は、まず、従業員満足(ES)を高めることだと考えています。
このES向上についても、さまざまな方法があるのですが、以前、「従業員が付加価値」ということに触れたことからも分かるように、従業員の方の仕事に取り組む様子そのものに付加価値があると考えて、従業員の方を育成することが基本だと思います。したがって、経営者の方の役割は、「人づくり」、「組織づくり」が最も重要ということになるでしょう。
2025/9/25 No.3207
