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オラクルひと・しくみ研究所代表の、小阪裕司さんによれば、石川県金沢市にある、紙製品卸売業の浜田紙業では、自社の従業員のことを伝える「自己紹介レター」を顧客に送り始めたところ、半年後に、ある顧客から値引きなしで大量注文を受けたそうです。同時に、値引きなどを強く求めてくる顧客との取引は解消していったとのことです。このようなことが起きたことから、同社では「従業員が付加価値」と考えるようになったそうです。
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今回も、前回に引き続き、オラクルひと・しくみ研究所代表の、小阪裕司さんのご著書、「顧客の数だけ、見ればいい-明日の不安から解放される、たった一つの経営指標」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、小阪さんによれば、新潟県五泉市の食品スーパー・エスマートは、2024年に店舗改装をしましたが、その際、トイレの増設、出入口の移設、店舗内通路の拡大、床の張替えを行い、結果として売場面積は減少したものの、このような改装は顧客のストレスを減らすことが目的であって、売場面積は減少しても、同店の売上は増加が見込めるということについて説明しました。
これに続いて、小阪さんは、石川県の浜田紙業では、自社の従業員のことを伝える「自己紹介レター」によって、顧客からの支持を得ているということについて述べておられます。「石川県金沢市の浜田紙業。(中略)同社は、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの卸業です。それも、大手メーカー品を扱っている会社であり、同業他社との商品での差別化はほぼ、不可能です。かといって価格競争をしてもじり貧になるだけです。そんな浜田紙業が見つけた付加価値は、『自分たち自身』でした。
きっかけは、『顧客の数』を見る経営の取り組みとして、『自己紹介レター』を作成し、お客さんヘ送る商品に同梱し始めたことでした。加えて、自分自身や会社の人たちのことを積極的に開示した『浜田紙業通信』という名の二ューズレターを作成し、取引先に送ることも始めました。ニュースレターはBtoCのビジネスでもやっているところはそう多くありませんが、BtoB企業が行うのは極めて珍しいことです。
その取り組みを始めて半年も経たないころでした。ある法人のお客さんが、ネットを通じて粗品用のボックスティッシュを大量に買ってくれました。それまでは、こういった大量の発注の際には『大量なので値引きできませんか』と言われることが多く、この時も、先方からの要求はないものの値引きをするかどうか迷っていたそうです。そんな中、そのお客さんからメールが届きました。
『お便りありがとうこさいます。浜田紙業通信も会杜のことがよくわかり、三代目のつぶやき!、お芋掘り!、たくさん掘れてよかったですね。ホントに楽しく拝読させていただいてます。そして、加賀野菜のおでん!、とても美味しそうです』このように、商品や注文には関係ないレターの話題が続き、最後にさらっと、『さて、昨日お電話でお話しさせていただきましたが、また○○(商品名)を購入させていただきます』値下げどころか、追加注文までもらってしまったのです。
このような反応に手ごたえを感した浜田さんは、さらにこうした活動を増やします。その一つが、事務・営業スタッフが取引先への請求書に、自筆のひと言メッセージを添えること。これもとても好評で、取引先からしばしば、そのスタッフ宛に感謝のメッセージなどが届くようになりました。こうした取り組みを続けるにつけ、お客さんからの温かい声が増えるようになり、一方で、値引きなどを強く求めてくる取引先は、自然といなくなっていったそうです。
浜田紙業はこうして、自社の『顧客』を手に入れたのです。『価格だけを重視するのではなくこうした浜田紙業の活動に共鳴してくれる企業』こそが、浜田紙業の顧客だったということです。浜田さんはこれらのことを通じて、『自分や、働いている人たちを含めて浜田紙業だと考えたら、自分たちのキャラクターは真似されない』、『商品の差別化はできなくても、会社の差異化はできる』、すなわち、『自分たち自身』もお客さんにとっての付加価値なのだ、と気づいたと言います」(143ページ)
仕事とは直接関係のない情報をニュースレター形式で(見込)顧客に送る手法は、よく、保険代理店の方や、住宅販売会社の方などが実践し、効果を得ているということは、私も知っていました。でも、浜田紙業は、卸売会社であり、顧客は法人であるにもかかわらず、同様の手法で成功しているということを知り、私も少し驚きました。
ただ、顧客が法人といっても、判断するのは感情を持った生身の従業員の方なので、BtoBの事業であっても、BtoCと同じ手法で効果を得ることができるのでしょう。そして、このことは小阪さんも言及しておられますが、従業員の方が、何か特殊な能力を持つ必要はなく、仕事に懸命に向き合っている様子を伝えるだけで効果を得ているとうことに注目すべきだと思います。
すなわち、もともと従業員の方に「付加価値」があるわけですので、それを活用しないでおくことは、もったいないことだと私は考えています。ちなみに、私はメールマガジンを配信していますが、メールマガジンの冒頭で個人的な出来事を記載しており、それに関心を持っててくれる読者の方が多いようです。したがって、私の「付加価値」を高めるために、引き続き、メールマガジンを配信していこうと思っています。
2025/9/18 No.3200
