鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

共鳴価値を感じると高い安いがなくなる

[要旨]

ラクルひと・しくみ研究所代表の、小阪裕司さんによれば、東京都中央区日本橋人形町にあるジビエ料理店の「あまからくまから」では、熊料理について、「伝説の猟師独自の門外不出の熟成技術で2週間じっくり吊るしてから入荷」などの説明を添えるような取り組みを行った結果、顧客が共鳴価値を感じるようになり、客単価が5,000円から1万2,000円に増加したということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、オラクルひと・しくみ研究所代表の、小阪裕司さんのご著書、「顧客の数だけ、見ればいい-明日の不安から解放される、たった一つの経営指標」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、小阪さんによれば、ホンダカーズ仙台北では、新車の販売台数を増やすことから、顧客を増やすことに方針を転換した結果、売上が増加したということですが、これは、顧客関係管理を強化することで、顧客シェアを高めるという手法であり、新車がなかなか売れない時代に適した手法と言えるということについて説明しました。

これに続いて、小阪さんは、「共感価値」を高めることで客単価が2倍になった料理店についてご紹介しておられます。「ジビエ料理店『あまからくまから』では以前、提供していたある熊肉料理のメニューに次のように記していました。まずは料理名。『これが最高の熊鍋です!飛騨の伝説の熊撃ちが仕留めた月の輪熊入荷しました。“究極の月鍋”』加えて、次の文章が続きます。

『飛の伝説の熊撃ちIさんは、70歳過ぎでありながら、200メートル先の的のど真ん中を打ち抜く凄腕猟師。彼独自の門外不出の熟成技術で2週間じっくり吊るしてから入荷しております。知り合いのシェフは“彼の熊で作ったスープは味が他とはまるで違う”と言います。他の料理人との奪い合いを制して入荷しております。是非この機会にお召し上がりください』まさに『ストーリー』が語られていることがおわかりいただけるでしょう。

あるいは、こういう熊料理もあります。『ヒグマと月の輪熊ってどっちが美味しいの?“鍋で対決!ヒグマVS月の輪熊・熊鍋コース”』これには次の説明が続きます。『よくお店でお客様から聞かれるんです。ヒグマと月の輪熊ってどっちが美味しいの?正直、どちらのお鍋も美味しいです(笑)。でもこれでお客様自身で確認できるんじゃないかと思います。今の時期が一番美味しい穴熊のタタキもついてます!』

これらの料理は以前同店が出していた料理よりずっと高価ですが、この『価値』に『共鳴』したお客さんにとってその価格は『妥当』。どれも大人気メニューになっています。だからこそ、顧客単価が上がっていくのです。あまからくまからでは、この取り組みを始めた2017年に5,000円前後だった顧客単価は毎年上がり、現在は1万2,000円を超えています。なんと、2.2倍。

しかもなお、顧客は増え続けています。共鳴価値がなぜ単価を上げるのか。それは、人が会社や店、商品やサービスに対して強い共鳴価値を感じると、『高い・安い』がなくなるからです。そこにまた、あまからくまからのように、より価値の高いものを考え、生み出し、その価値にふさわしい価格をつけて提供していく。すると顧客もまた、『驚きや感心、感動を伴って』それを受け入れていく。この循環が単価を上げていくのです」(92ページ)

小阪さんの言う「共鳴価値」とは、小阪さんの独自の考え方のようで、商品に関して顧客が共鳴する価値のことのようです。言葉の定義はどうであれ、小阪さんのご指摘するように、(潜在)顧客に自社商品に関して共鳴してもらおうとする働きかけは効果が高いと思いますし、この手法で成功している会社は少なくないと、私も考えています。

例えば、2018年10月にサービスを開始した、売れ残りパンを販売する通信販売プラットフォームの「rebake」は、年を追って販売量を拡大し、2023年8月までに800トン以上のパンを販売し、廃棄されるパンの削減に貢献しています。これは、おいしいパンをリーズナブルに食べたいという需要だけでなく、フードロスをなくす社会を実現しようとしている同社の価値観に共鳴している顧客が多いことの現れだと思います。

ちなみに、最近は、顧客体験価値(CX)という言葉が多く聞かれるようになりましたが、私は、共鳴価値とCXは重なる面が多いと思います。すなわち、あまからくまからの熊料理は、普段はなかなか食べることができない熊料理について、さらにIさんの物語を加え、珍しい体験ができるということに、顧客に価値を感じさせています。rebakeについても、フードロス削減に貢献するという体験に顧客に価値を感じさせています。したがって、これから自社商品の付加価値を高めようと考えている場合は、このような観点から商品開発のアプローチを行うことが鍵になると、私は考えています。

2025/9/13 No.3195