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オラクルひと・しくみ研究所代表の、小阪裕司さんによれば、ホンダカーズ仙台北では、新車の販売台数を増やすことから、顧客を増やすことに方針を転換した結果、売上が増加したということです。これは、顧客関係管理を強化することで、顧客シェアを高めるという手法であり、新車がなかなか売れない時代に適した手法と言えます。
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オラクルひと・しくみ研究所代表の、小阪裕司さんのご著書、「顧客の数だけ、見ればいい-明日の不安から解放される、たった一つの経営指標」を拝読しました。同書で小阪さんは、自動車の販売台数よりも、顧客数を増やすことで成功した自動車販売会社の事例をご紹介しておられます。「『順客の数だけ見るという方針でビジネスが根本から変わり、成長を続けている会社があります。仙台市にある『ホンダカーズ仙台北』です。
社長の小山実さんが父親から店を継いだのは2004年。当時のホンダカーズ仙台北はこく一般的な『新車の販売をして儲ける企業』でした。しかし、新車の販売数はどうしても、メーカーが作った製品の良し悪しに左右されます。また、買い替えまでとんなに短くても数年はかかります。そのため、常に新しいお客さんを開拓しなくてはなりません。つまり、いつまでたっても経営が安定しない。それはつまり、いつまでたっても不安から解放されない。
この状況に危機感を抱いた小山さんは、発想を大きく変えました。売上ではなく『顧客の数を増やしていくこと』に注力することにしたのです。具体的には、新車販売よりも『メンテナンス』に力を入れるようにしました。新車は数年に一度しか買わない人も、メンテナンスなら定期的に来でくれるからです。新車を買ってくれた人はもちろんですが、他社で新車を買った人も、ホンダカーズ仙台北でメンテナンスをしてもらえばいい。
これなら新車が売れなくても『顧客』は増えていきます。そこで、すベての施策を『いかに多く新車を売るか』から『いかに顧客を増やすか』にシフトしたのです。そのために店舗も、『いかに多くの車を陳列するか』でなく、『いかに居心地の良い空間を作るか』にチェンジ。販売店を2カ所に集約するとともに、面積を確保するためにあえて郊外に移転。隣接した土地も取得し、カフェを作って人を呼び込むこともしました。
また、顧客情報を管理し、適切なタイミングでアプローチできるシステムを自社開発するなどして、徹底的に『顧客の数にこだわる』施策を追求したのです。その結果、ホンダカーズ仙台北の基盤収益経費力パー率(新車の収益を抜いた収益の割合)は、売上のおよそ93%となり、新車が売れようが売れまいが、安定的に売上を上げることができるようになりました。売上のほうも、2022年度と比111.8%を実店しています。
この例からつくづく感じることがあります。人は、選択肢が多いほうが迷う。選択肢が少なくなればなるほど、悩まない。悩まないと、活動は力強くなるのです。ホンダカーズ仙台北は結果的に前年比アップを成し遂げていますが、別に『前年比アップを目指している』わけではありません。あくまで、『顧客のためになることを考えていたら、結果的に前年比アップしていた』ということです」(42ページ)
小阪さんのご著書で小阪さんが使っている「顧客」という言葉は、少し、説明が必要です。同書の別の所で説明しているのですが、小阪さんの指す顧客とは、単なるリピート客ではなく、会社に「愛着を持っている」、「信頼を寄せている」、「共感を抱いている」顧客を指しているようです。したがって、自社を強く支持している顧客のことということのようですが、ここでの説明はここまでにしておきます。
話をホンダカーズ仙台北について戻すと、同社のとった手法は、顧客関係管理(Customer Relationship Management、CRM)の強化による顧客シェアの向上という方法です。CRMについては、情報技術が進展した現在では、競争力を高めるためには必須となっている手法です。同社では、恐らく、車検や買い替えのタイミング、家族構成や自動車の嗜好、趣味などを管理して、適切なセールスに活かしているのでしょう。
繰り返しになりますが、これは、「顧客」の数を増やす基本的な手法です。そして、顧客シェアの向上ですが、顧客シェアとは、顧客の支出にしめる自社製品購入額の割合のことを指します。顧客シェアの対義語は市場シェアです。市場シェアは一般的に言われているシェアのことで、自動車で言えば、販売額や販売台数のうち、それぞれのメーカーの割合のことです。したがって、いわゆるシェア争いは、販売額や販売台数の争いのことです。
でも、顧客シェアは、顧客の支出に占める自社製品の購入額の割合ですので、市場シェアを高めるアプローチとは別のアプローチが必要です。ホンダカーズ仙台北の場合、自動車の販売台数を増やすのではなく、顧客シェアの高い「顧客」を増やすことに注力したことから、結果として売上も増えたと言えます。繰り返しになりますが、小阪さんは。顧客シェアを高めることを、「顧客を増やす」と表現していますが、かつてのように新車が売れにくくなっている時代は、このようなアプローチの効果が高いということに間違いはないでしょう。
2025/9/12 No.3194
