鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

課題を見極めからPDCAを実践する

[要旨]

経営コンサルタントの長谷川和廣さんによれば、PDCAが会社を効果的に操縦する手法であることは間違いないものの、本当の意味でPDCAを理解し、かつ効果的に活用できている会社は少なく、それは、根本的な問題・課題を見抜かないまま、計画を作っているからだそうです。そこで、PDCAで仕事をうまく回すには、情報の収集・分析で課題を見極めたうえで解決すべき目標を定め、計画を立案・実行しなければならないということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんによれば、取引先から何らかの問い合わせを受けた時は、すぐに返事をすることが大切ということで、もちろん、問い合わせに即答できないこともありますが、そのような場合は、正確でなくても何らかの返答をしておくことで、取引先の方も何らかの対応を早めに打つことができるので、回答が遅い場合と比較して、取引先からの評価は大きく違ってくるということについて説明しました。

これに続いて、長谷川さんは、PDCAを実践するには、事前に情報収集を行った上できちんと計画を策定することが大切ということについて述べておられます。「『PDCA』という言葉が、ビジネスシーンでも一般的に使われるようになりました。PDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の略で、事業活動における生産管理や品質管理などを円滑に進める手法です。しかし、大半の会社では十分に活用できているとは言えません。

PDCAが会社を効果的に操縦する手法であることは間違いないのですが、本当の意味でPDCAを理解し、かつ効果的に活用できている会社はほぼないのです。本来ならば、PDCAを回す前に情報を収集・分析し、真の経営課題は何か把握する必要があります。根本的な問題・課題を見抜かず、計画を作って行動してもPDCAが上手く回るはずがありません。

私が関わってきた2000以上の赤字企業には、『経営課題が何かわからないままPDCAを回している』という共通点があります。PDCAで仕事をうまく回すには、情報の収集・分析で課題を見極めたうえで解決すべき目標を定め、計画を立案・実行しなければならないのです」(96ページ)

私も基本的に長谷川さんと同じ考えですが、少し異なる点があります。長谷川さんは、「PDCAを回す前に情報を収集・分析し、真の経営課題は何か把握する必要がある」と述べておられますが、私の場合、PDCAの「P」は計画策定であり、そのためには情報収集や課題の明確化が必要であり、PDCAが指すものには情報収集や課題の明確化も含まれていると考えています。

すなわち、私の考えが長谷川さんと異なるところはPDCAという言葉ば指す範囲ということです。話を本題に戻すと、きちんとした計画を策定せずにPDCAを実践している会社は、PDCAを目的化しているからだと思います。私は、「PDCAを回すこと」こそが「経営」だと思っていますが、会社の経営の目的は利益を得ることであり、それを実現するための手段が「PDCAの実践」です。

ですから、利益を得るためには効果の高いPDCAが実践されなければならないわけですが、PDCAが目的化してしまうと、効果のあるPDCAは行われにくくなると考えられます。では、どのようなPDCAが望ましいのかということについては、詳細な説明は割愛しますが、私は、バランス・スコア・カード(BSC)の実践で、効果の高いPDCAが実践できると考えています。

BSCといっても、あまり難しく考える必要はありません。まずは、自社の外部環境(機会と脅威)、自社の内部環境(強みと弱み)を調べます。そして、機会と強みを活かす戦略、脅威と弱みを克服する戦略を策定します。さらに、それらの戦略の目標を、学習と成長の視点(従業員の視点)、内部プロセスの視点、顧客の視点、財務の視点で設定します。この目標のことを重要業績評価指標(Key Performance Indicator、KPI)と言います。

ここで、確かに、KPIの設定にはややこしい点があります。ひとつは、定性的な目標をどうやって数値化するかという点です。これについては、直接的な数値ではなくても、定性的目標を測ることになるであろうという数値を目標にします。例えば、「従業員満足度を高める」という目標については、「賞与の増額」、「有給休暇の消化率」、「社外研修の受講回数」などで測ります。

もうひとつの難しさは、4つの視点の目標を有機的につなげることです。例えば、従業員満足の向上(従業員の視点)→納期の短縮(プロセスの視点)→顧客満足度の向上(顧客の視点)→売上の増加(財務の視点)と、目標をつなげることです。このような有機的なつながりを明確にすることで、それぞれの戦略が、会社の利益獲得にどのように貢献しているかも明確になります。

そして、これらの目標を3か月ごと(または、6か月ごと)に確認していけば、効果の高いPDCAが実践できます。とはいえ、このBSCによるPDCAの実践はひとつの例ですが、PDCAを目的化したり、PDCAも実践せずに成行的に活動をしていては、競争力は高まることはありません。よりよい事業活動を実践するためにも、効果のあるPDCAを実践することこそ経営者の役割であり、業績を向上させる近道だと私は考えています。

2025/8/27 No.3178