鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

現在のビジネスではスピードが最重要

[要旨]

経営コンサルタントの長谷川和廣さんは、取引先から何らかの問い合わせを受けた時は、すぐに返事をすることが大切ということです。もちろん、問い合わせに即答できないこともありますが、そのような場合は、正確でなくても何らかの返答をしておくことで、取引先の方も何らかの対応を早めに打つことができるので、回答が遅い場合と比較して、取引先からの評価は大きく違ってくるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんは、ニコン・エシロールの建て頂しをしていたとき、業界1位の会社が価格競争に参入してきたころから、社員たちの反対を押し切り、あえて高付加価値高価格の商品を市場に投入したところ、その商品は大ヒットし、業績を一気に回復したそうで、これは、高価格商品は利益率が高いという商売の王道に基づいた手法が奏功したからだということについて説明しました。

これに続いて、長谷川さんは、クイックレスポンスの重要性について述べておられます。「スピードは、今日のビジネスにおいて、最重要キーワードの1つといえます。このことは、日頃のコミュニケーションにおいても同様です。次のようなメールが親しくしている取引先から朝イチであった場合、あなたならどうしますか?『おたくのA製品を午後の会議で検討したいんだけど、いくらぐらい負かるものかな?』答えは簡単。即座に値引きの判断ができる上司に相談して『○%までなら、お値引きすることができます』と返事すればいいのです。

上司が外出していれば、いかなる方法で探し出してでも、即答するのです。出先の交渉で受けた質問も、可能な範囲内で答えます。『戻ってから、あらためて連絡します』では遅いのです。『値引きの件ですが、○%までは確実にお受けできます。もっとお引きできると思いますが、これ以上はいったん社に戻ってから連絡させてください』と答えておけば、先方にある程度の予定が立ちます。返答は、必ずしも正確を期する必要はありません。質問する人は、とりあえず何かしらの情報を欲しているということを理解してください。

一方、とりあえずという返信でお茶を濁している人が多いのではないでしょうか?よく次のような例が見受けられます。社に戻ってみると、以下のようなメールが取引先から届いていました。『A社の業績の情報を、何かお持ちではないでしょうか?』これは、一見通常の仕事とは異なる内容の文面です。しかし、あえてこのようなことを聞いてくるということは、何か切羽詰まった事情があるに違いありません。人ですから、プロの仕事の実力者は、次のように答えるはずです。『情報はいつまでに必要ですか。やれる範囲で調べてみます。私が知る限りでは、業績はあまりよくないと聞いています』と」(92ページ)

私が地方銀行の渉外係として働いていたときのことですが、取引先の中小企業の経営者の方たちは、良くも悪くも、気の短い人たちばかりでした。ちょっと話がずれるのですが、自社の従業員にはそれほど厳しくないのに、銀行職員に対してはとても厳しいという経営者の方も少なくありませんでした。そのため、融資相手の会社の経営者の方から、質問や要望を受けた時は、少なくともその日のうちに、何らかの回答をしなければ、気分を損なわれてしまい、取引維持に影響を受けることになりました。

そういった経験から、長谷川さんのご指摘は、正しいかどうかの前に、クイックレスポンスをしなければ取引をしてもらうことはできない、必須の条件であると、私の頭の中には染みついています。では、取引をしてもらっている銀行は、常に、融資相手の会社に相当の労力を使ってクイックレスポンスをしなければならないのかというと、クイックレスポンスのおかげで取引がうまくいくという面もありました。

これは、私の想像なのですが、当時の中小企業経営者の方が、なぜ、銀行にクイックレスポンスを求めていたのかというと、表面的には課題を早く解決するためではあったものの、実態としては、「あの銀行は、本気で当社と取引をしようとしているのだろうか?」と、銀行の本気度を試していたのではないかと思います。この想定が正しいとすれば、試されている側はきつい面もありますが、逆に言えば、銀行側はクイックレスポンスをすることによって、「私たちは貴社を重要顧客として考えています」とアピールすることができたとも考えることができます。

経営環境は年を追って厳しくなっていく中、どうやって競争に勝つかという方法も見つけにくくなっているわけですから、その勝つための方法が分かっていただけでも前向きに仕事に臨むことができました。この私の経験はひとつの例ですが、クイックレスポンスに取り組むかどうかだけでも、長期的には成果の差は大きく現れてくるのではないかと、私は考えています。

2025/8/26 No.3177