鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ジャッジメントとディシジョン

[要旨]

経営コンサルタントの長谷川和廣さんによれば、ジャッジメント(判断)とは情報を十分に検討して、正しい答えを導き出すことであり、デンジョン(決断)とは検討の結果を踏まえて、どの道を選ぶかを決することだそうです。そして、欧米のビジネスパーソンの戦略が論理的で紋密なのは、この2段階構造が文化に根付いているからなのだそうですが、日本のビジネスパーソンはディシジョンの概念を持ち合わせていないことから、判断に時間をかけずに、決断で迷ってしまうケースがかなり頻繁に起こっているということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんは、プラス思考というのは、あえて意識して持とうと思わなければ身につかない思考なので、常にプラス思考を意識して仕事に臨まなければ、良い成果も得られないものであり、したがって、上司は部下に対して、プラス思考を持っているかどうかもきちんと評価しているということについて説明しました。

これに続いて、長谷川さんは、決断を迅速に行うことが大切ということについて述べておられます。「20代から40年間、グローバル企業である外資の会社を渡り歩いてきた私の持論ですが、日本社会の大きな欠点は、『判断』と『決断』を混同しているところではないでしょうか。

この2つを明確に区別するだけで、ビジネスは格段にスピーディかつ効率よく進みます。英語では、ジャッジメント(判断)とデシジョン(決断)に明確に区別されています。ジャッジメントとは情報を十分に検討して、正しい答えを導き出すこと。デンジョンは検討の結果を踏まえて、どの道を選ぶかを決することです。欧米のビジネスパーソンの戦略が論理的で紋密なのは、この2段階構造が文化に根付いているからだと思うのです。国際化社会の真っ只中にいると、ますますそう感じます。

一方、日本の場合はどうでしょうか?たいていの日本人は日常において、『決断』という言葉自体、あまり使わないのが現状です。これは、日本のビジネスパーソンがデシジョンを意味する概念自体を持ち合わせていない証拠なのです。そのせいで、日本社会では判断に時間をかけずに、決断で迷ってしまう、というケースがかなり頻繁に起こります。日本の会社の会議が長時間に及ぶのは、この典型的な例です。理由は、決断できるような級密な判断が揃わないうちに、決断しようとするからです。

そのうえ、判断が貧弱なままで決断を下すわけですから、その決断が正解にならない確率も高くなります。『船頭多くして船山に上る』とよく言いますが、この言葉と同じことが日本人一人ひとりの心の中でも起こっているわけです。私は、決断するときは、たとえ1分間でも時間のかけ過ぎだと考えています。決断に時間がかかるようなら、判断が間違っているか、不十分である証拠です。だからこそ判断は、級密であるべきだと、自らを律しています」(82ページ)

ビジネスにおける決断は、とても難しいということは事実だと思います。例えば、ファーストリテイリングユニクロ)の会長兼社長の柳井正さんでさえ、1勝9敗と言っているくらいなので、正しい決断はできないと考えることが妥当だと思います。さらに、時には、社内で意見が51対49で割れるような場合であっても、社長が最終的な決断をしなければならないこともあると思います。そして、もっと複雑なことは、A案とB案があったとき、結果的にあ2つの案とも正解というときもあるし、どちらも不正解というときもあります。

これにもっと複雑さが加わると、決断自体は誤っていたものの、その決断後の活動を行う中で、失敗しないような努力を積み重ねていった結果、最終的には成功になったということもあります。こう考えれば、決断は1日でも、否、1秒でも早く行って、早く結果を見るといった、決断→実践→検証のサイクルを早く回すことが賢明だと言えるでしょう。ここで、「早く決断することが良いのであれば、意思決定は熟考しない方がよいのか」という疑問を感じる方がいるかもしれません。

もちろん、いい加減な判断はすべきではないと思いますが、経営環境が複雑化している現在は、意思決定の早さが業績に大きく影響する時代だと思います。例えば、ドン・キホーテなどを傘下にもつパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの社長の吉田直樹さんのご著書、「ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました」によれば、権限委譲を進めて、部下たちに意思決定を委ねたことが、同社の好業績の要因であると書かれています。

ですから、現在は「巧遅は拙速に如かず」という考え方が大切だと思います。逆に、問題なのは、当然のことながら、決断をしないことです。「決断をしない」というのは、実際は、現状を維持する決断をしていることであり、いわゆる大企業病にかかっている会社にこの傾向があります。当然、そのような会社は業績が悪化していくということは言うまでもありません。

ところで、もっと大切なことは、ここまで書いてきたことは、多くの方が容易に理解できることにもかかわらず、未だに決断をしない会社やビジネスパーソンは少なくないということです。上から目線で恐縮ですが、経営者や幹部社員の最も重要な役割は意思決定といっても過言ではないと思います。でも、意思決定をしない会社が少なくないということは、その役割を果たしていない経営者や幹部社員が多いということでしょう。

2025/8/24 No.3175