鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

本当のプロとはエラーをしない人

[要旨]

経営コンサルタントの長谷川和廣さんは、プロフェッショナルの人とは、華々しいファインプレーを連発するする人のことをイメージされがちですが、実際はそうではなく、エラー(取りこぼし)をしない人だということです。なぜなら、そのような人の方が、安定的に成長するからであり、上司はそのような人に仕事を任せたいと考えるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんは、部下を抜擢する時は、(1)自分で考え、仕事を楽しんでやる人であること、(2)苦労の経験を積んでいる人、(3)成功体験を積み重ねる努力をしている人であることを求めているそうですが、特に、成功体験を積み重ねる努力をしている人を信頼するということについて説明しました。

これに続いて、長谷川さんは、プロフェッショナルは、ファインプレーをするよりも、エラーをしなことが大切ということについて述べておられます。「『プロフェッショナル』というと、何だか人間ワザでは想像もつかないような華々しいファインプレーを連発する人物をイメージするかもしれません。しかし本当のプロとは、エラーをしない人のことです。もともと私は、仕事というものは95%が表面に表れな努力で、あとの5%が結果として目に見えてくるものと考えています。

ですから華々しい結果があるからといって抜擢せず、仕事をきちんとこなしているかどうかを注意深く見て昇進を決めてきました。結果主義ではなく能力主義であるよう心がけました。社員というのは、計算できる安定感があって初めて仕事を任せられるのです。そのような理由から、プロになるためには何より『取りこぼさないこと』が重要だと思います。そして取りこぼさない仕事をするために大事なのは1にも2にも『基本』です。一発長打を狙うより、確実なヒットを積み重ねる。そんな人材こそ、上に立つ者の目には頼もしく映るものなのです」(76ページ)

長谷川さんは、「一発長打を狙うより、確実なヒットを積み重ねる、そんな人材こそ、上に立つ者の目には頼もしく映る」とご指摘しておられますが、私も同じように考えています。とはいえ、起業した経営者の方には、全員とは言わないまでも、「自分はエースピッチャー兼4番バッターとして、スター選手のような活躍をしたい」という希望を持っている人は少なくないようです。

私も、その気持ちは理解できます。せっかく、リスクをとって起業したのだから、スター選手のように活躍したいと考えることは自然なのかもしれません。そして、そのようにして成功する経営者の方もいます。ただ、そのような経営者は、割合としては極めて少ないというのが現実のようです。したがって、最初から、自分の「夢」を諦めた方がよいとまでは言いませんが、会社の黎明期はヒットを積み重ねることをお薦めします。

確かに、ヒットを打ち続けることは遠回りのような感じがしますが、ヒットを打つことそのものが容易ではありません。ですから、ヒットを重ねていくうちに、さらに難易度の高いことに挑戦できそうだというくらい基盤が固まれば、経営者の方がスター選手となって活躍する方がよいと、私は考えいます。ちなみに、京セラ創業者の稲盛和夫さんは、ご著書、「アメーバ経営」で、次のように述べておられます。

「創業後の京都セラミツクは、いままで市場に存在しなかった、さまざまな、ファインセラミック製品を開発し、次々に製品化していった。そのため、会社の規模は急速に拡大し、最初は28名だった従業員数も、5年もしないうちに100名を超え、やがて200名、300名と増えていった。それにもかかわらず、当時の私は、製品の開発から、製造、営業まで、ひとりで走り回っていた。もう、私自身の体がもたないし、仕事もうまく回らなくなる。『中小企業と腫れ物は、大きくなると潰れる』-中小企業がどんぶり勘定のままで大きくなれば、管理不可能となり、潰れるとよく言われるが、当時の会社は、すでにその状況に近づいていた」

この稲盛さんのご指摘は、管理体制を整えないままで、社長ひとりが会社を牽引していくと、事業の拡大には限界があるということです。話しがそれますが、黎明期の京セラがこのような状況になったことが、稲盛さんがアメーバ経営を導入しようとするきっかけとなったようです。話を戻して、長谷川さんのご指摘と、稲盛さんのご指摘は、趣旨が異なりますが、ひとりのエースプレーヤーが活躍する会社よりも、たくさんの従業員がヒットを積み重ねていく(または、エラーをせず、取りこぼしが起きないようにする)方が安定的に成長し、長期的な視点では事業が拡大すると、私は考えています。

2025/8/22 No.3173