[要旨]
経営コンサルタントの長谷川和廣さんは、部下を抜擢する時は、(1)自分で考え、仕事を楽しんでやる人であること、(2)苦労の経験を積んでいる人、(3)成功体験を積み重ねる努力をしている人であることを求めているそうです。そして、特に、成功体験を積み重ねる努力をしている人を信頼するそうですが、それは、成功する過程では必ず壁にぶつかるはずですがそれを突き破るには楽しみながら仕事に取り組まなくては努力を続けることができないからだということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんによれば、ビジネスにおいて信用はとても大切ですが、一方で、例えば、1度、納期が遅れただけでもすぐに崩れてしまうので、プロフェッショナルに徹している人は、多少お金がかかっても必ず納期を守るということであり、このようにして信用を維持することは支出が増えると感じられるものの、信用の維持によって得ることができるメリットの方が大きいと考えるべきだということについて説明しました。
これに続いて、長谷川さんは、成功体験を積み重ねることが大切ということについて述べておられます。「私が部下を抜擢するときの条件は単純です。それは、その人が『プロ』なのか『アマ』なのかという点。私の考えるプロ社員の見極めポイントは基本的に、やる気・専門能力・調整能力・人望・健康の5つ。でも、これだけでは、まだプロの候補生にしか過ぎません。
5つの能力を満たし、そのうえで、(1)自分で考え、仕事を楽しんでやる人であること、(2)苦労の経験を積んでいる人、そしてなおかつ、(3)成功体験を積み重ねる努力をしている人であることを求めます。特に私が信頼を置く人材というのは、(3)の『成功体験を積み重ねる努力をしている人』です。成功するためには、常に(1)・(2)の能力を引き上げる必要があります。そして、その過程では必ず壁にぶつかるはずですがそれを突き破るには楽しみながら仕事に取り組まなくては続きません。そうすれば自然とすべての必要・十分条件をクリアできるのです」(75ページ)
長谷川さんは、「成功体験を積み重ねる努力」を重視しておられますが、私は、このような正攻法が遠回りのようで、実は、最短で成功する方法だと思っています。このような私の考えに対して、「正攻法が望ましいのは分かるけれど、それは建前で、現在は経営環境が激しいので、なるべく少ない労力でより多くの成果を得ないと、競争に敗れてしまう」と考える方も多いようです。このような意見は、一見すると正しいように感じるのですが、私は、大きな見落とし(というよりも、目を背けていること)があると考えています。それは、組織づくりです。
京セラ創業者の稲盛和夫さんは、京セラの事業が拡大するにつれて、自分がすべてを管理することが困難になったため、組織を小集団(アメーバ)に分け、それぞれのリーダーを経営者と同じ視点で組織運営をしてもらうようにしています。ドンキホーテ創業者の安田隆夫さんも、1号店が量感陳列で成功したあと、2号店を出店する際に、自分自身の手法をそのまま実践させようとせず、2号店の店長に、その店長のやり方で店舗運営を委ねています。
確かに、他社の成功事例などを学ぶことは大切ですが、その学びで一時的に成功することはあっても、長続きはしません。経営者だけでなく、部かも含めて成功体験を積まなければ、強い組織にはならず、真に強い会社になることはできないと私は考えています。ところが、この組織づくりは、時間を要し、また、すぐに効果を得ることができません。そして、前述のように、「正攻法は建前」と考える人たちは、効率性を求めるという大義名分で、組織づくりという避けることができない経営者の役割から逃げていると私は考えています。
2025/8/21 No.3172
