鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

プロとはいざという時に逃げない人

[要旨]

経営コンサルタントの長谷川和廣さんによれば、ビジネスにおいて信用はとても大切ですが、一方で、例えば、1度、納期が遅れただけでもすぐに崩れてしまうので、プロフェッショナルに徹している人は、多少お金がかかっても必ず納期を守るということです。このようにして信用を維持することは支出が増えると感じられるものの、信用の維持によって得ることができるメリットの方が大きいと考えるべきだということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんは、「毎日10キロ走れ」とか「1日10時間勉強しなさい」と言われるのと比べれば、早起きの実践はあまり意志の強さを必要とせず、比較的容易に実践できる習慣なので、これを継続的に実践することで、自分に自信をつけることができ、このことによってさらに困難な仕事に積極的に臨むことができるようになるということについて説明しました。

これに続いて、長谷川さんは、プロフェッショナルになるにはいざという時に逃げてはいけないということについて述べておられます。「私の55年のビジネス人生で最も大切にしてきたものは『信用』です。ただし、信用というものは非常にもろいもので、納期が一度遅れただけで簡単に壊れてしまうケースもあります。そして仕事のアマチュアは、その大切な信用を簡単に壊してしまうのです。

では、プロフェッショナルはどうするか?お金が多少かかってでも、人海戦術を取って納期に間に合わせます。これはプロの歌手が高熱を押してでも約束のステージに立つのと同じ責任感です。このような仕事ぶりには痛みが伴いますが、その見返りも大きいのです。

もしかしたらクレーム相談も来るかもしれませんが、プロは決して逃げません。すぐに現場に直行して、相手の懷に飛び込みます。私のノートにも、『ここで逃げてはだめだ』という言葉が何度も書かれています。ひと言で言うなら、『プロの仕事人とは、いざというときに逃げない人だ』と、断言していいでしょう」(74ページ)

本旨から少しずれるのですが、私は、長谷川さんの、「プロの仕事人とは、いざというときに逃げない人だ」という言葉が印象に残りました。というのは、私が銀行に勤務し、渉外活動をしていたとき、業績のよい中小企業の経営者は、どういう銀行と取引することを望んでいたのかというと、逃げない銀行と取引を望んでいたということが分かったからです。

業績のよい会社は、たくさんの銀行から融資取引のセールスを受けます。ですから、当座の資金繰には困ることはありません。でも、経営環境は突発的に変わることがあり、そうなると自社の業績も悪化することになるので、そうなっても融資を続けてくれる銀行との取引を最も望んでいるのです。

ここで、さらに話がずれますが、銀行は、「晴れの日に傘を貸そうとするけれど、どしゃぶりになると傘を取り上げる」と、しばしば、揶揄されることがあります。すなわち、融資相手の会社の業績がよいときにはたくさんの融資をしようとするけれど、その会社の業績が傾くと、直ちに融資を回収しようとすることです。これについては、そのようなことが起きることがあることも事実ですが、特に、地域金融機関は、可能な限り融資相手の会社を支えようとすることが基本です。

これについては、直接、裏付ける根拠は見つからなかったのですが、「中小企業活性化協議会の活動状況について~2024年度活動状況分析~」によれば、「2024年度の相談件数は、8,761件(前年度比+29%)と増加」、「2024年度は、金融機関からの相談が企業本人を上回っており、都道府県等からの相談件数も増加」ということであり、地域金融機関が事業再生に決して消極的ではないということはご理解いただけると思います。

話を1つ戻すと、前述したように、銀行からみて業績のよい会社は融資取引をするにあたって魅力的な会社なのですが、そのような会社からみれば、本当に自社が困ったときに支えてくれる銀行なのかが分からなければ、融資セールスに応じるメリットはありません。そこで、そのような会社にはどのようなアプローチをするのかというと、実は、私はこれが正解だという方法を示すことができません。

それでも、私が、当時、実践したことは、まず、約束は守ること、もし、約束を守ることができなくなりそうになったら、事前にお詫びすること、銀行にとって不利になることであっても、融資を受けている会社に有利になる情報(利下げや融資条件の緩和など)であれば積極的に伝えること、銀行の情報網を活用してその会社の収益機会を増やす情報を提供することなどです。

こういったことは、直接、どしゃぶりの日に傘を取り上げないことを確証させる要因にはならないものの、銀行側の本気度を伝え、徐々に取引に応じてもらえるようになって行きました。こういった行動は、長谷川さんが、「相手の懷に飛び込む」ということなのかもしれません。そして、このような真摯な活動は、どのような業種にも共通することなのだと、長谷川さんのご指摘を読んで改めて感じました。

2025/8/20 No.3171