鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

仕事の報酬は仕事

[要旨]

経営コンサルタントの長谷川和廣さんは、かつて、外資系企業で働いていたとき、ある食品関連会社のマーケティングを担当し、何度も企画を練り直した結果、その商品は大ヒットしましたが、その後、長谷川さんに次から次に舞い込むようになり、そのときから、「仕事の報酬は仕事」という言葉を確信したそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんによれば、かつて、事業改善のために長谷川さんが関与した会社で、イベントの企画書の提案を受けた時、そこにはイベントによってどれくらいの売上に貢献できるかが記載されていなかったことがあったそうですが、業績の悪い会社には、利益についての発想が抜け落ちているお役人型ビジネスパーソンは意外に多いということについて説明しました。

これに続いて、長谷川さんは、仕事の報酬は仕事であるということについて述べておられます。「この言葉は、私がまだ30代の初めに、ある外資系企業でプロダクトマネジャーとして、日々、仕事に追われていたときに上司から教えられたものです。そのときは、ある食品関連のマーケティングを任されていました。プレゼンを5回はやりましたが、まったく企画がとおりません。これが最後だと思い、徹夜をして必死になって考え、ようやく提案が承認されました。

その商品はその後、大ヒットし、会社の売り上げにも大きく貢献しました。それからです、いろいろな仕事が私のところに舞い込んできたのは……。そんなときに上司に呼ばれ、『仕事の報酬は、仕事なのだ』と言われたのです。当たり前な、単純な言葉ですが、今でも心にずしりと残っています。あの人は良い人だとか、あの人は真面目だとか、あの人は頭が良いとか……。それだけで食っていけるほど、ビジネスは生易しくありません。

良い仕事をしたから、そして売れるものを作り、会社に貢献できたからこそ、次の仕事がくるのです。だからといって、仕事が舞い込むものではありません。あくまでも、『仕事の報酬は仕事』。お客様や取引先、そして自社に大きく貢献し、利益を出したからこそ、次の仕事に恵まれる。そして、だからこそ、自分や周りの人たちの生活も潤うのです」(40ページ)

長谷川さんがご指摘しておられる、「仕事の報酬は仕事」という言葉に解説は不要でしょう。そこで、これについて、少し理論的(理屈っぽく)に説明したいと思います。その理論は動機付け衛生理論です。すなわち、従業員に動機付けをするには動機づけ要因が必要であり、その動機付け要因とは「仕事という報酬」ということです。では、「仕事という報酬」とは何かというと、そのひとつは「職務拡大」です。これは仕事の範囲を水平的に広げるというもので、担当顧客を増やす、担当業務を増やすというものです。

もうひとつは「職務充実」です。これは仕事の範囲を垂直的に拡大することで、権限を拡大したり、マネジメントを担当させたりすることです。この2つは、量や質は異なるものの、従来よりも仕事の量が増えたり質が高まったりすることから、自分が会社から信頼されている、または期待されているということを感じることになり、従来よりも仕事に懸命に取り組もうという動機付けになるということです。したがって、部下たちに積極的に働いて欲しいという経営者の方は、動機付け要因を部下たちに与えればよいということなのですが、最近、これがなかなか実践されていないのではないかというトピックを目にしました。

帝国データバンクが2025年3月に公表した、令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査によれば、人事評価制度を設置している会社は、回答した会社20,982社のうち、40.6%だということです。さらに、これは、従業員数30名以下の会社に限ると、回答した会社12,851社のうち、25.1%に減少するということです。

人事評価制度を設置している会社が、必ずしも動機付け要因を与えていることになるとは限りませんが、人事評価制度を設置している会社は、従業員から見ればモチベーションが高まることは間違いないでしょう。繰り返しになりますが、人事評価制度の内容も大切ですが、その有無が動機付けになっていると考えることができます。したがって、中小企業では、従業員の方に対する働きかけの余地が大きいと、私は考えています。

2025/8/14 No.3165