[要旨]
経営コンサルタントの長谷川和廣さんによれば、かつて、事業改善のために長谷川さんが関与した会社で、担当者からセールスプロモーションのイベントの企画書の提案を受けた時、そこにはイベントの実施によってどれくらいの売上に貢献できるかという見込みが記載されていなかったそうです。すなわち、業績の悪い会社には、利益についての発想が抜け落ちているお役人型ビジネスパーソンは意外に多いということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんによれば、例えば、すばらしい企画書をつくっても、そのつくった人の信用がなければ、会社内の人からはその企画書を受け入れてもらうことは難しくなるので、普段から同僚の話を誠実に聞き、常に素直な心で向き合うことで信用を築いていくことが、仕事を円滑に進めるためには大切だということについて説明しました。
これに続いて、長谷川さんは、利益を獲得することを意識することが大切ということについて述べておられます。「以前、私が再生させたあるメーカーで、セールスプロモーションのための店頭イベントを開催することになりました。イベントの成否は主婦層をどれだけ集客できるかにかかっています。担当者からプランが上がってきたとき、それは一見完璧なものに見えました。集客法や雨天の場合の対処法まできちんと練り上げてあったのです。
しかし……、そのプランには『どれだけ売り上げに貢献できるか』という記述が、どこにも見当たらなかったのです。冗談のような話ですが、利益についての発想がスッポリ抜け落ちている『お役人型ビジネスパーソン』は意外に多いものです。そしてその大半は、自分がそうだということにまったく気づいていません。特に赤字会社の社員にこの手の企画書を提出させると、半数以上に利益に関する記述が見られないことも珍しくないのです。『いくら儲かるのか?』を常に考えることが仕事人の基本です!』(38ページ)
長谷川さんは、「赤字会社の社員にこの手の企画書を提出させると、半数以上に利益に関する記述が見られないことも珍しくない」とご指摘しておられますが、私も、中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から、同じような傾向を感じています。このようなことが起きる原因のひとつは、明確な根拠を示すことはできないのですが、経営者の方が事業活動と利益の関係を意識していないからだと考えています。
では、そのような会社では、なぜ、経営者の方が事業活動と利益の関係を意識していないのかというと、ひとつは、経営者自身が評価する事業は顧客も評価するので、必ず利益が得られると思い込んでいる傾向があるようです。これは、私が、直接、聞いたことではないのですが、ある税理士の方から、顧問先の社長に、「当社の決算書を赤字にするなんて、君は腕が悪い税理士だね」と言われたことがあるそうです。
このような社長は極端な人だと思うのですが、自分の判断は正しいく、事業も黒字になるはずだから、決算書が赤字になったとすれば、それは、税理士に問題があると考えてしまうようです。しかし、特殊な場合を除き、決算書は一般的に会社の業績を機械的に集計したものですから、経営者の能力で黒字になったり赤字になったりするものではありません。そして、前述の社長のような極端な人とまではいかなくても、独り善がりな考え方をしている経営者の方は少なくないと、私は感じています。
経営者の方が事業活動と利益の関係を意識していない理由の2つ目は、ひとつ目と関連するのですが、経営者の方が会計が不得手ということです。そのため、自社の事業が黒字の見込みになるかどうか、事前に会計的な観点からの検証を行うことをしないので、ある意味、いい加減な見通しで事業を開始してしまうために、事後的にしか結果が分からないといものです。そして、そういう甘い見通しで開始した事業は、たいていは赤字になります。長谷川さんの事例に話を戻すと、業績の悪い会社には、経営者を始めとして、会計を得意とする人は少ないという傾向があることは間違いないと思います。
2025/8/13 No.3164
