[要旨]
経営コンサルタントの長谷川和廣さんによれば、潜在能力のあるビジネスパーソンには3つのステージがあり、第1段階は才能のある「切れる人」、第2段階は調整力のある「できる人」、第3段階は広く社会のことまで考慮できる「導ける人」ということです。特に人間の度量は、どれだけ多くの人に対して責任を持てるかで測ることができるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの長谷川和廣さんのご著書、「2000社の赤字会社を黒字にした社長のノート」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、長谷川さんによれば、たくさんの会社の事業改善の経験から、成功している会社は経営環境に合わせて変化できる会社であり、そこで、経営者の方も従業員の方も、変化しようとする勇気を持つことた大切だということについて説明しました。
これに続いて、長谷川さんは、ビジネスパーソンは「導ける人」になることが大切ということについて述べておられます。「私は20代半ばから種々多様な人たちと出会ったせいか、潜在能力のあるビジネスパーソンには3つのステージがあることに気づきました。第1段階は『切れる人』。この手の人は頭の回転が速いので、才能は感じさせます。しかし、生意気が鼻につく。仕事に関しても『術』のレベルの人です。なぜ生意気で終わってしまうかというと、調整力がないからです。自分が『全体の中の個』という観念が抜け落ちているせいで、自分の手の届く範囲でしか仕事を上手にこなせないのです。
第1段階の人が調整力を身につけると、『できる人』の段階になります。ひと言でいうと『尊敬される人』にランクアップするわけです。仕事上でも、小手先の『術』ではなく、調整力を使って人を動かし、『策』を打てるように成長する。こうなってくるとセクションのリーダーを任せても安心です。さて、そういう『できる人』が進む第3ステージは何でしょうか?私は『導ける人』だと思うのです。単に社内レベルだけではなく、世のため、人のためになるようなロードマップ、いうなれば『道』を示すことができるようになるのです。
しかし、ここまで達するには仕事に打ち込むだけでは事が足りません。常に自社のため、自社の人間のために考えるのは当然のことで、さらに社会のために何をするのが正しいかを考えてこそ、達することができる域だと思います。そう考えると、1つの答えが出てきます。『切れる人』は、自分のことしか考えられない人。『できる人』は、部署や社内に心を配れる人。『導ける人』は、広く社会のことまで考慮できる人……。実は、人間の度量は、どれだけ多くの人に対して責任を持てるかで測れるということです」(26ページ)
少し古い話になりますが、2000年代前半に、スペインのサッカーチームのレアルマドリードは、多くのスター選手が集まり、銀河系軍団と言われていました。ところが、優秀な選手が集まったにもかかわらず、成績は低迷しました。これは、チームワークがよくなかったことが原因といわれていますが、組織的活動の成果は、個人の能力に比例するとは限らないということのひとつの例ど言えます。そこで、長谷川さんの指す「切れる人」がいると、1+1が2ではなく、3にも4にもなる組織ができるということなのでしょう。
さらに、佐藤さんは、「導ける人」を目指すべきと述べておられます。少し趣旨が異なるのですが、稲盛和夫さんは、「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉を残しておられます。これは、「自分の利益や都合、格好などというものでなく、自他ともにその動機が受け入れられる」ことであれば、事業は成功するということを指しているようです。
さらに、この考え方は、2006年に米国の経営学者のポーターが提唱した、CSV(Creating Shared Value、共通価値の創造)経営に通じるものだと、私は考えています。共通価値とは、社会的な価値と会社の価値の両面から価値があるということで、このような価値は、広く社会に受け入れられるというものです。とはいえ、CSV経営を実践することは、頭で考えるほど簡単なものではないということも現実だと思います。これを実践するには、まず、事業基盤が固まっている必要があるからです。
ただ、経営者の方は、「切れる人」、「できる人」、「導ける人」を育成することを優先しなければならず、それが自社の事業を成功させる基盤になると、私は考えています。繰り返しになりますが、経営者の方は、直接的に事業に関わるのではなく、人材を育成することの方に活動の比重を置かなければなりません。
2025/8/11 No.3162
