[要旨]
中小企業診断士の佐藤義典さんによれば、ベネフィットには機能的ベネフィット、情緒的ベネフィットがあるそうです。機能的ベネフィットは、物理的で計測しやすいベネフィットのことで、腕時計の例で言えば、時間がわかるということはもちろん、手間がかからない、見やすいなど時計本来の機能に関連したものを指すそうです。一方、情緒的ベネフィットとは、デザイン、憧れなど、腕時計の本来の価値とは、あまり関係ない価値であり、例えば、高級プランドの時計を買った人は、そのプランドの時計を買ったという達成感であったり、憧れの時計をしているという体験を指すということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典さんのご著書、「ドリルを売るには穴を売れ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、佐藤さんによれば、顧客が自社製品を購入する決断をするのは、顧客が得られる価値が、顧客が払う対価より大きいと感じるときなので、会社はベネフィットを大きくしなければなりませんが、顧客が支払う対価には、製品やサービスの金額はもちろん、製品についての情報収集の手間や時間、お店に行く時間や交通費、使い方を覚える時間など、価値を得るための金額、時間、手間などのすベてが含まれるので、マーケティング活動を行うのは、マーケティング担当部署だけではないということを認識しなければならないということについて説明しました。
これに続いて、佐藤さんは、ベネフィットには機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットがあるということについて述べておられます。「マーケティングでおそらくは一番重要な考え方、ベネフィットについて考えていこう。あなたは今、腕時計をしているだろうか?しているとしたら、なぜ他の時計でなくその腕時計を買ったのかという理由を、もし腕時計をしないのならその理由を、1分間でよいので考えてほしい。さて、ビんな答えが思い浮かんだだろうか?
わたしはこの質間を数百人以上の人にしたが、答えとしては、以下のようなものが多かった。腕時計をしている:人安かったから、軽いから、電池交換の手間が省けるのでソーラー充電だったから、文字盤が大きくて見やすいから、常に正確な電波時計がほしかった、結納返しに高級時計をもらった、 私服にもスーツにも合いそうなデザインだったから、あこがれのプランドを自分へのごほうびに。腕時計をしていない人:時間は携帯電話でわかるので不要、重いしジャマになるから。これがすなわち、『顧客にとっての価値』であり、ベネフィットなのだ。
わたしが投げかけた『なぜその腕時計を買ったのですか?』という質問、つまり『腕時計を買った理由』がベネフィットだからだ。何かを買うには理由がある。それが、買う理由だ。時計の基本的な価値は、もちろん、『時間がわかる』ということだ。それ以外にも、これだけの『価値』を時計は提供している。先ほどの腕時計のベネフィットは、『機能的ベネフィット』と『情緒的ベネフィット』に分類できる。機能的ベネフィットとは、物理的で計測しやすいベネフィットのことで、時間がわかるということはもちろん、手間がかからない、見やすいなど時計本来の機能に関連している。
『軽さ』というのも、重さは計測できるし、持ち運ぶことを前提とした腕時計の本来的な価値との関連性が高いので、機能的ベネフィットといえる。情緒的ベネフィットとは、デザイン、憧れなど、腕時計の本来の価値とは、あまり関係ない価値のことだ。たとえば、高級プランドの時計を買った人は、『そのプランドの時計を買ったという達成感』だったり、『あこがれの時計をしている自分』を買っているわけだ。プレゼントの場合も、もらった人にとっては重要な価値で、これも多分に情緒的だ。腕時計を買う、ということに対しても、これだけの『価値』があるのだ。
機能と情緒の間に明確な線を引くのは難しいが、大体の雰囲気はおわかりいただけるだろう。機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットをまとめると(中略)、機能的ベネフィットは、早い、便利、うまい、などの基本的な機能だ。(中略)もう一方の情緒的ベネフィットは、顧客の感情の分だけ無数に存在する。いわゆる人気商品は、機能的ベネフィット、情緒的ベネフィット、またはその両方を高いレベルで満たしていることが多い。たとえば、ルイ・ヴィトンのバッグについて、機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットを考えてみていただきたい。
どのようなものがあるだろうか?ここでは、何が正解、間違いというのはない。ルイ・ヴィトンを買った人それぞれが求めているものが、正解である。ある女性は、『ヴィトンをもってると、何となく“わたしイケてる”って感じがするんです』と言っていた。もちろん、モノを持ち運ぶというカバンとしての機能的なベネフィットが根底にあり、それに加えて『イケてるわたし』という価値を手に入れるために、十数万円のヴィトンのバッグを買うのだ」(49ページ)
ほとんどの方は、現在は、製品は機能的ベネフィットを提供するだけでは購入してもらうことはできないということをご理解されると思います。さらに、時計の例では、時刻を知る手段というもともとの機能でさえ、ふまーとフォンがあるので、不要と判断される場合もあります。したがって、製品を購入してもらえるようにするには、どれだけ多くの情緒的ベネフィットを提供できるのかが鍵になります。ところが、情緒的ベネフィットは、単に、従来の考え方に基づく品質を高めるだけでは提供できないというところに難しさがあります。
例えば、現在、ローソンの具なしカップ麺がヒットしていますが、これは、「高品質なカップラーメンをお手頃価格で食べたい」という顧客の要望で開発したと、ローソンでは公表しています。すなわち、スープの味はおいしくするものの、具を入れないことで価格を抑えるという発想は、生産する側ではなかなかできないことですが、顧客の要望に直接的に応えことがヒットの要因と言えます。
それでは、何でも顧客の要望を受け入れればよいのかというと、実際には受け入れが不可能な要望もあるかもしれないし、受け入れが可能であるため、その要望に基づいて製品を開発したとしても、それが必ずヒットするとも限りません。そして、これは私の想像ですが、ローソンの具なしカップ麺も、顧客の要望通りに製品を開発したところ、結果としてそれがヒットしたということであり、事前にヒットすることをローソンが確実視していたわけではないのではないかと思います。すなわち、顧客の要望通りの製品を開発すれば、それが必ずヒットするというほど、ヒット商品開発は単純なことではないでしょう。
話を本題にもどすと、経営環境が成熟した現在は、情緒的ベネフィットを提供することが大切であり、そのためには、ほぼ、マーケットインの考え方で製品を開発しなければならなくなりつつあるということです。少なくとも、製品を提供する側が、「私たちはよい製品を提供している」という、一方的な製品評価だけでは、競争力を高めることはできなくなっているということに注意が必要です。
2025/8/1 No.3152
