鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

働き甲斐のある職場は社員が幸せになる

[要旨]

ドクターリセラの社長の奥迫哲也さんは、働きやすさだけでなく、働き甲斐を重視しているそうです。なぜなら、働きやすくても、楽しさや喜びを感じられない職場では従業員は幸せになれないと考えており、具体的には、自主性を発揮してもらうようにしているそうです。その結果、かつては30%近くあった入社3年以内の離職率が、近年は5%まで改善したということです。


[本文]

今回も前回に引き続き、ドクターリセラの社長の奥迫哲也さんのご著書、「社長の仕事は人づくり」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、奥迫さんは、「お客樣の喜びを追求することが私たちの使命ですが、そのために従業員が儀牲になるのはおかしい」と考えており、例えば、従業員自身が肌のトラプルに悩んでいれば、自信を持って接客できないし、また従業員が不健康なら、余裕を持って接客できないばかりでなく、健康な顧客をねたむことになるので、同社のフィロソフィーに「自喜利他」を明記し、従業員満足を高めるようにしているということについて説明しました。

これに続いて、奥迫さんは、同社では働きやすさより働き甲斐を重視しているということについて述べておられます。「会社は社員とその家族を幸せにするためにあります。では、どうすれば社員を幸せにできるのでしょうか。前提としてお話ししておきたいのは、『働きやすさ』より『働き甲斐』が重要だということです。後述するように、ドクターリセラでは社員が働きやすい職場をつくるために、さまざまな制度を導入しています。

ですから、けっして働きやすさを軽視しているわけではありません。しかし、たとえ働きやすくても、楽しさや喜びを感じられない職場では人は幸せになれるのでしょうか。私はそうは思いません。ワークライフパランスでプライベートを楽しむことも大切ですが、1日の多くの時間を職場で過ごすから、その時間が退屈で空虚なものであれば、人生全体が暗いトーンになってしまいます。

働き甲斐のある職場で働くことは、人生を豊かにするために欠かせない条件だと思います。問題は、どうすれば働き甲斐のある職場になるのかということでしょう。働き甲斐に関係する要素はいろいろありますが、私がとくに重視しているのは、自主性を発揮できるかです。社会的意義の大きい仕事でも、上から命じられていることを機械的にこなすだけでは面白みがありません。

自分なりに工夫の余地があったり、自分の頭で考えて行動できる環境のほうが楽しいです。ドクターリセラは、前章で紹介したように社員が自主性を発揮する仕組みを整えています。その結果、かつては30%近くあった入社3年以内の離職率が、近年は5%まで改善しました。この数字からも、自主性を発揮できる環境が働き甲斐を高め、それが従業員満足につながっていることがおわかりいただけるでしょう」(194ページ)

詳細な説明は割愛しますが、ハーズバーグの動機付け・衛生理論の考え方からは、働きやすさは衛生要因当てはまると考えられます。すなわち、働きやすさを高めることは不満を解消することにはなりますが、満足の度合いを高めることにはならないということです。したがって、奥迫さんがご指摘しておられるように、動機付け要因である、働き甲斐を提供しなければ、従業員の方の満足の度合いは高まらないと考えられます。

したがって、働きやすさだけを重視していても、離職率の低下は限定的となるでしょう。なお、念のために言及しますと、働きやすさなどの衛生要因を軽視してもよいのかというと、必ずしもそうではなく、衛生要因を充実させることも大切であり、どちらかに偏ることが問題だということです。では、動機付け要因を充実させるにはどうすればよいのかということですが、奥迫さんは、「自主性を発揮させる」と述べておられます。私も、奥迫さん同じ考えです。

ところが、従業員の方に自主性を発揮してもらうことについては、頭で考えるよりも難しい現実もあると、私は考えています。これは、奥迫さんは言及していませんが、私がこれまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、従業員の方は、必ずしも働き甲斐を重視する人だけではないということです。有体に書けば、難しい仕事や責任の重い仕事はしたくない、勤務時間はなるべく短かくて、給料はなるべく高い方がよいとしか考えない人も、若干、いることは現実だと思います。

したがって、経営者の方が、働き甲斐を感じて欲しいと考えて働きかけを行っても、あまり関心を持ってもらうことができず、自主性を発揮しようとしない従業員の方もいるでしょう。このような従業員の方については、経営者の方にとって労力がかかるし、結果としてお互いの理解が深まらないこともあると思いますので、経営者の方は、根気強く働き甲斐を感じてもらうための働きかけを行う強い意志が必要になると、私は考えています。

2025/7/26 No.3146