鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

1人の従業員が悪ければ会社も悪い

[要旨]

ドクターリセラの社長の奥迫哲也さんによれば、同社のフィロソフィーに「100-1=0」というものがあり、これは、同社の社員として相応しくない行動をすれば、会社全体の信用が失われるというものだそうです。すなわち、顧客は「100人いて一人が悪くても、残り99人は良い」とは考えず、「100人いて一人が悪ければ、残りがどうであろうと悪い会社」とみなすということだそうです。したがって、社員の方には一人ひとりが会社を代表しているという自覚を持って行動するように伝えているそうです。


[本文]

今回も前回に引き続き、ドクターリセラの社長の奥迫哲也さんのご著書、「社長の仕事は人づくり」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、奥迫さんによれば、同社のフィロソフィーに、他部門や社外の人で困っている人がいたら、積極的に助けるをたすける精神を重視すると記載しており、なぜなら、セクショナリズムのように、自分のことしか考えずに行動する人は、顧客からみると迷惑をかけることになるためということについて説明しました。

これに続いて、奥迫さんは、会社の信用を高めるためには、従業員の方の行動が大切ということについて述べておられます。「フィロソフィーの『100-1=0』も好きな頂目です。これは、ドクターリセラの社員として相応しくない行動をすれば、会社全体の信用が失われるという意味です。お客様は『100人いて一人が悪くても、残り99人は良い』と考えない。『100人いて一人が悪ければ、残りがどうであろうと悪い会社』とみなします。

マナー研修できていただいた先生は、『10等分に切ったピザのひと切れが腐っていたら、他の9切れは手に取ってもらえない』と表現していましたが、まさしくそのとおりだと思います。ドクターリセラの社員らしく振る舞うベきは、業務時間内に限りません。わが社の常務、城嶋杏香さんは美の伝道師としてテレビ番組や広告にも登場しているので街を歩けば指を差されることもあります。城嶋さんが電車で口を開けて、よだれを垂らしながら居眠りをしていたらどうでしょうか。目撃した方は、おそらくドクターリセラに対していい印象を抱かないでしょう。

一般社員も同じです。新入社員に社章を手渡すとき、私はその重さを次のように強調します。『ある信販会社の人は、“うちに社章はない。貸出金の回収で、会社のことを恨んでいるお客様もいる。社章をつけていれば、へタすると刺されるおそれもある”と言っていました。みなさんは喜ばれる仕事をしているので、社章をつけることをきっと誇りに思えるでしょう。ただ、どちらにしても社章をつけた瞬間、みなさんはドクターリセラの代表になります。社章は、それくらい重いものです。社外でも、そのことを忘れずに行動してください』」(179ページ)

奥迫さんの、「従業員一人ひとりが、会社を代表している」というご指摘はその通りだと思いますし、また、ほとんどの方がそう考えるでしょう。その一方で、従業員の方が、顧客に不満を抱かせる行動をして、会社の信用を傷つけてしまうということは珍しくありません。典型的な例は、大きな会社や市役所などに問い合わせをした時、たらいまわしをされるということは珍しくありません。もちろん、そのような不親切な行為は、その不親切な従業員に直接的な問題があります。

しかし、極端に感じるかもしれませんが、そのような不親切な従業員の存在は、最終的には経営者の責任だと思います。もしかしたら、顧客に不親切な従業員も、自身の会社からの待遇に不満があり、「面倒な顧客の相手などしていられない」と考えているのかもしれません。また、経営者は従業員満足を高めようと努力しているものの、もともと人と接することが苦手な従業員がいるのかもしれませんし、上司に対してだけ愛想よくして、部下や顧客には冷たく接する従業員がいるのかもしれません。原因はさまざまだと思いますが、従業員が顧客に不信感を持たせてしまえば、それは最終的には経営者に責任が問われるということになります。

とはいえ、ここまで述べてきたことは、私が改めて言及するほどのことではないと思います。ただ、現在は、顧客と従業員の関係が業績に大きく影響する時代になっていると、私は考えています。経営者の方が、従業員の方に対して、「従業員一人ひとりが会社を代表していると考えて仕事をしてください」と伝えることは当たり前です。しかし、それだけで従業員の方が会社を代表するのにふさわしい行動をすると考えることは誤りです。では、具体的にはどうすればよいのかというと、以前の記事で述べたように、「動機付け要因・衛生要因」の考え方に基づき、特に動機付け要因となる従業員教育などを行って、帰属意識を高めることが重要であると、私は考えています。

2025/7/23 No.3143