鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『部下に本音を言って欲しい』は本音?

[要旨]

ビジネスコーチの、秋山ジョー賢司さんによれば、経営者の方が、部下に会社に問題点があると感じたときは、それを報告して欲しいと言いつつも、本当は、事業がうまくいっていない問題点について、部下がもっとそれに気づいて、その改善のために自分で行動して欲しいという意味で言っているそうです。そこで、経営者は、部下だけに頼ろうとせず、事業を改善するためには、まず、自分が行動を変えて改善活動を実践するという前提で、部下に問題点を報告させるようにすることが大切だということです。


[本文]

ビジネスコーチの、秋山ジョー賢司さんのポッドキャスト番組を聴きました。番組の中で、秋山さんは、経営者が部下に対して、会社に問題があれば、それを本音で報告してもらいたいと述べるときがあるけれど、実は、経営者の本音はそうではないことがあると述べておられました。具体的には、部下に問題点を報告して欲しいと言いうときは、本当は、事業がうまくいっていない問題点について、部下がもっとそれに気づいて、その改善のために自分で行動して欲しいという意味で言っているのだそうです。

そして、秋山さん自身も、かつて、自分の本音に気づかずに、部下に対してそのようなことを言っていたということです。私も、これまで、中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から、同様のことを感じてきました。ところで、多くのビジネスパーソンの方は、「会社の大きさは社長の器で決まる」とか、「社長の器以上に会社は大きくならない」ということをきいたことがあると思いますし、これの意味することに疑問を感じる人もほとんどいないと思います。

だからといって、ここで、こういった考え方が大切だと言うことを、改めてお伝えするつもりもありません。ところが、秋山さんも、かつて、会社をよくするために、問題点を部下に報告してもらいたいと口では言っていたものの、改善活動は部下が実践すべき、すなわち、変わるのは部下だと、無意識に考えていたということです。恐らく、これは人間の防衛本能によるもので、現状を変えなくてはならないと思いつつも、潜在意識では自分は変わらずに、他人に変わってもらおう、他人に解決してもらおうと考えてしまい、さらには、そう考えていることに自分自身は気づいていないことが多いのだと思います。

もちろん、会社においては、経営者だけが変わればよいということではなく、部下たちも進歩することが望ましいということに間違いはありません。しかし、経営者と部下では立場が違います。仮に、部下が進歩しようとしても、経営者以上に進歩することは、現実的に困難です。それが、「社長の器以上に会社は大きくならない」が示すことなのだと思います。会社は、よくも悪くも「経営者が中心」に回っています。だから、中心にいる経営者が、まず、自らが変わろうとしなければ、部下も変わりません。

そして、それを経営者が強く意識していないと、経営者はそのことが頭から抜けてしまい、部下だけを変えようとしてしまうようです。繰り返しになりますが、このことは、ほとんどの方が理解でき、また、反対する人もいないと思うのですが、実践している人はあまり多くないと感じていたので、今回、あらためて記事にしました。そして、このことは、私自身にもあてはまりますので、私も、他人を変えようとするよりも、日々、自分自身の改善に努めて行こうと思います。

2025/5/15 No.3074