[要旨]
エグゼクティブコーチの谷口りかさんによれば、東京都中央区にある、物流業界向けのクラウドサービスの開発を行っている、株式会社canuuの濱田崇裕社長は、現在の物流業界が持続的に成長するためには、IT活用が不可欠であると考えているそうです。そして、ITを活用した次世代インフラの構築が実現すれば、業界全体が効率化し、持続可能な形で成長していくことができるということです。
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今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの谷口りかさんのご著書、「2024年問題成長するトラック運送会社が見つけた『答え』」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、福岡ロジテックでは、同社の黎明期に信用力不足で苦心したことから、現在は、信用調査機関の評点を60点にすることを目指しているそうですが、信用力を高めることで、取引先との交渉や、銀行の融資審査が円滑になるほか、従業員の士気も向上し、同社の事業の成長の支えとなっているということについて説明しました。
これに続いて、谷口さんは、物流業界向けのクラウドサービスの開発を行っている、株式会社canuuが開発したツールと、その活用について述べておられます。「株式会社canuuは、『物流業界向けのクラウドサービスの企画・運営・開発、および配送運送事業』を展開しています。同社は、ラストワンマイル業界が抱える課題に対し、ITを活用したアプローチを行っています。同社の濱田崇裕社長は、現在の物流業界が持続的に成長するためには、IT活用が不可欠であると強調しています。
しかし、アナログな取り組みで成り立ってきた業界では、『今まで成り立ってきた』という現状を変えたくない抵抗感から、IT導入が遅れていると認識しています。同社が開発した『ノウカル』や『ノキコレ』といったツールは、ドライバーが個々に持つノウハウや納品手順といった情報を集約・共有することで、業務効率を高めるだけでなく、業務の透明性を向上させ、働く人々のやりがいを引き出す仕組みを提供しています。
これらの取り組みは、単なる業務効率化やコスト削減を超えて、業界全体を未来に向けた『次世代エコシステム』へと進化させることを目指しています。濱田社長は、IT導入だけでは課題解決にはならず、ドライバーや管理者の『リテラシーの進化』が伴わなければ、ITの利便性は十分に発揮されないと述べています。いまだ、ITツールに対する抵抗感や、変化を恐れる声も少なくありませんが、濱田社長は、物流業界の明るい未来のためには嫌われ者を買ってでも変革をもたらすための挑戦が必要であると強調しています。
他にも同社では、ドライバー同士の横のつながりを作るSNSとして、配達員向けのSNS『ドラトーク』も運営しています。このプラットフォームは、ラストワンマイルを担う配達員同士が情報交換やコミュニケーションを行う場を提供し、現場の知見やノウハウ、求人や地域への便利情報等の共有を促進しています。これにより、個々のドライバーが持つ経験や情報を公有することで、陰ながら、業務の効率化や配送品質の向上、そしてドライバーの働きやすい環境づくりを支えています。
『ノウカル』、『ノキコレ』のような新しいツールを導入することで、従来負担していた無駄な業務並びに費用が改善されますが、運用のためには『新しいものを利用する』という気概を投資する必要があります。ITを活用した『次世代インフラ』の構築が実現すれば、業界全体が効率化し、持続可能な形で成長していくことができるでしょう。濱田社長の考える『次世代エコシステム』への転換は、同社の取り組みを通じて、物流業界全体に変革をもたらす可能性を秘めているとも言えます」
私が述べるまでもありませんが、現在の情報技術は、従来から行われてきた業務の省力化や効率化という目的では利用されなくつつあります。すなわち、情報技術でなければ実現できないことを目的に利用されるようになってきており、したがって、情報技術を活用できる会社ほど競争力を高めることができることになります。その例のひとつは、「ドライバー同士の横のつながりを作るSNS」である「ドラトーク」を活用することによって、「個々のドライバーが持つ経験や情報を公有することで、業務の効率化や配送品質の向上、ドライバーの働きやすい環境づくり」が実現されています。
ところが、運送業界に限らず、日本では、他国と比較して、産業界での情報技術の活用があまり浸透していないようです。では、なぜ、日本では情報技術の活用が遅れているのかという理由については、日本では、情報技術への抵抗感が強いからと考えることができます。さらに、日本では、なぜ、情報技術への抵抗感が強いのかという理由については、私もきちんとした理由はわからないのですが、その原因の1つは、ITリテラシーを高めるための活動が少ないからだと思います。
これは、私が経験的に感じていることなのですが、経営者の多くは、新しいシステムを導入するだけで、それを活用できるようになると考えてしまいがちです。しかし、システムは導入しただけでは活用できることにはなりません。それらを使いこなせるリテラシーを、ユーザーである従業員たちが習得していなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。ところが、現在の日本では、システムを開発する会社はたくさんあるものの、それに比較して、ユーザーのリテラシーを高める訓練を担う会社は極めて少ないと感じています。
私は、システム開発会社が、潜在顧客のITリテラシーを高めるための訓練を担う業務も行えば、その訓練を行った会社に対して自社が開発した製品も合わせて販売できるようになると思っているのですが、恐らく、訓練を担う業務は、そのための人材育成が難しく、あまり行われていないのだと思います。ところが、「濱田社長は、物流業界の明るい未来のためには嫌われ者を買ってでも変革をもたらすための挑戦が必要である」という気概をお持ちのようです。このような考え方を持つ社長が増えてくれれば、日本の運送業界だけでなく、あらゆる業界の競争力が高まると、私は考えています。
2025/3/5 No.3003