[要旨]
エグゼクティブコーチの谷口りかさんによれば、福岡県粕屋郡にある福岡ロジテックでは、「社員を第一に考える」方針に基づき、家族を含めた「人」を大切にする文化、温かみのある福利厚生、個人を尊重する職場環境を実現しているそうです。例えば、社員が子どもの入学式や運動会といった家族行事に参加できるよう、柔軟な休暇取得を推奨しているそうです。その結果、社員の満足度やモチベーションを高めるだけでなく、同社の業績や信頼性の向上にもつながっているそうです。
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今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの谷口りかさんのご著書、「2024年問題成長するトラック運送会社が見つけた『答え』」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、福岡ロジテックでは、同社の黎明期に、周囲の人からの協力で自社が発展してきたという経験から、「親切が先、商いは後」という経営理念を掲げており、荷主企業や運送会社に対して丁寧に接することで、同業者から評価されるようになり、関西からの帰り車を直接扱う市場占有率を向上させることができ、売上の約7割が運送取次事業になるという、先駆的な事業展開をするまでに至っているということについて説明しました。
これに続いて、谷口さんは、福岡ロジテックの従業員満足度を高める取り組みについて述べておられます。「福岡口ジテック株式会社が掲げる『社員を第一に考える』という姿勢は、同社の低い離職率の大きな要因だと考えられます。同社では、社員が働きやすく、やりがいを持てる環境を整えることが、会社全体の成長に直結すると考えています。その取り組みは、家族を含めた『人』を大切にする文化、温かみのある福利厚生、そして個人を尊重する職場環境の3つの柱に支えられています。
まずは『家族を大切にする』文化を徹底し、社員が子どもの入学式や運動会といった家族行事に参加できるよう、柔軟な休暇取得を推奨しています。また、同社では年に一度の経営大会に社員の家族を招待し、家族全員で会社の成長を祝う場を設けています。節目の年には抽選会やイベントも実施され、社員の家族が『会社の一員』として実感できるような工夫がなされています。さらに、同社の福利厚生は、社員とその家族に対する感謝の気持ちを具体的に表現しています。その一例が、社員の奥様の誕生日に贈られるクオカードと手書きのメッセージカードです。
『家族の支えが社員の仕事を支えている』という会社の価値観を伝え、家族にとっても社員が働いている会社に対しての安心感を寄せることができる機会になっています。こういった『社員を第一に考える』姿勢は、社員の満足度やモチベーションを高めるだけでなく、同社の業績や信頼性の向上にもつながっています。社員が安心して働ける環境が整備されていることで、離職率が低く、高い労働生産性を実現しています。このような取り組みは、単なる人事戦略ではなく、同社の経営理念そのものであり、長期的な成長を支える柱として機能しています」
従業員満足度を高めることについては徐々に理解が広まっているものの、一方で、費用や労力がかかる上に、効果が明確にならないことから、その実施を躊躇する会社も少なくないようです。しかし、経営環境が成熟してきた現在では、ライバルと差別化を図ることができる分野は極めて限定されてきており、残されている部分は人材以外はほとんどないと、私は考えています。そして、事実、業績の高い会社は、人材を育成する能力も高く、育成した人材で差別化を図っています。
そのひとつの例は、米国テキサス州の航空会社である、サウスウエスト航空です。ウィキベテアによれば、同社は、「社員第一、顧客第二主義」を掲げており、「業務と私生活のバランスを維持した上で、従業員の共同体と家族的なつながりを維持するよう奨励している。社員同士のみならず、社員の家族も含めたつながりを推奨しており、会社主催のパーティーには家族も招待されるほか、従業員の子供を定期的に職場に連れてくることが奨励されている」ようです。この家族まで大切にするという方針は、図らずも、福岡ロジテックと大きく重なっています。
そして、このことによって、同社の従業員同士のチームワークが向上し、同社の高い収益率を支える要因になっているようです。したがって、業績を高めたいという会社は、いきなり福岡ロジテックやサウスエスト航空のようなところまで実践できないとしても、段階的に従業員満足度を高める活動を実践することをお薦めします。もちろん、前述したように、すぐに効果が得られる手法ではありませんが、だからこそ、すぐに始めることがライバルとの差別化を図ることになります。
2025/3/3 No.3001