[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、マニュアルに書いて通りに動くことはあまり賢明でないと思われがちであるものの、マニュアルには先輩たちが過去に多くの失敗を経験して得られたノウハウが詰まっており、まず、マニュアルに忠実に動くことの方が、速く成長できるということです。そして、その結果、新しいノウハウを速く得ることができるようになり、マニュアルをさらにブラッシュアップできるようになるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、多くの会社では、形骸化し、理不尽なルールがありますが、それが効率的な活動の妨げとなることがありますが、リーダーは、組織の効率的な活動のために必要と考えられるのであれば、自らの責任で、理不尽なルールを変更しなければならないということについて説明しました。
これに続いて、中村さんは、マニュアルは重要であるということについて述べておられます。「いまの時代、『マニュアル』が軽視されています。書いてある通りにやることはバカにされがちです。しかし、マニュアルは、過去の苦労の結晶です。世の中にあるレシピや法則は、過去の膨大な失敗を経て、残っています。もちろん、それを見直すことは重要です。しかし、最初からすベでを疑い、マニュアルを軽視しでしまっているのが、いまのトレンドではないでしょうか。いったん、その通りに、忠実になろうとする方が、実は成長は早いのです。
私の会社にも、識学講師マニュアルが存在します。それに沿って、最初はロープレ(ロール・プレイング、役割演技)をしていきます。徹底的に叩き込み、トークを磨きます。それをやつていくうちに『個性』は出できます。料理であれば、レシピ通りに作っていても、その人ならではのクせで『昧』は出ます。その順番を守りましょう。マニュアルをナメないということです。書いてある通りに、『忠実に実行する人』だけが、マニュアルのすこさに遅れて気づきます。あるいは、新しい法則を発見し、マニュアルを改善できるのです」(19ページ)
「マニュアル」は、前々回お伝えした「歯車」と同じく、ネガティブなイメージを持っている人は少なくないと思います。例えば、「マニュアル人間」という言葉は、マニュアルにこだわりすぎる融通が利かない人という意味で使われます。しかし、マニュアル人間がつくられてしまうのは、マニュアルに問題があるのではなく、手段であるマニュアルを目的にしてしまうという、使う側の問題なのであって、それを理由にマニュアルを否定的に評価することは妥当ではないでしょう。
そして、安藤さんもご指摘しておられるように、「マニュアルは過去の苦労の結晶」であり、先輩たちが仕事を通して得られたノウハウがつまっていると考えれば、肯定的に受け止めることができるでしょう。さらに、「守破離」という茶道の教えは広く知られていますが、これは、最初は教えを忠実に守り、次に教えを基に応用ができるようになったら教えを破り、最後に、教えから離れて新しい分野を切り開くということのようです。
すなわち、これは安藤さんもご指摘しておられることと重なりますが、個性を発揮できるようになるためにも、最初は、教えに忠実であることから始めることの方が、近道であるということです。繰り返しになりますが、マニュアルは人の個性をなくすものではなく、先輩たちが学んだノウハウ集であり、それに従って仕事を習得することによって、自分を迅速に成長させてくれるツールになるということです。そして、リーダーは、マニュアルを手段ではなく、目的にしてしまっている人がいれば、それを改めて正しく理解できるよう促す役割が求められています。
2024/12/23 No.2931