[要旨]
ブリヂストン元CEOの荒川詔四さんによれば、優秀なコンサルタントは経営に活かすべきであり、その理由は、会社の価値観やしがらみから自由で、社内の「空気」を読む必要のない外部のコンサルタントは、遠慮なく「本気論」、「正論」を提示することができるからであり、全体状況を把握している経営者からすれば、「やっぱり、そういうことか」と腹落ちする戦略提案をしてくれることが多いからだそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、ブリヂストン元CEOの荒川詔四さんのご著書、「臆病な経営者こそ『最強』である。」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、荒川さんがCEOの時、中期経営計画の策定には、多くのコミュニケーション・コストをかけて事業現場にも関与させていたため、リーマンショックの時に、それを千載一遇のチャンスと捉え、競争力の低い工場の閉鎖を円滑に行うことができたということについて説明しました。
これに続いて、荒川さんは、コンサルタントの活用法について述べておられます。「コンサルタントとどう付き合うか--。これも、経営にとって重要なテーマです。私は、優秀なコンサルタントはどんどん経営に活かすべきだと考えています。彼らが経営課題の発見・分析、課題解決への戦略策定などに専門性を備えているのが大前提ですが、私が、コンサルタントに最大の価値を見出すのは、彼らが社内の人間関係や社内外の政治的なしがらみなどを理解していないことにあります。
経営者を含めた社内の人材は、それまでに社内で共有されてきた『価値観』、『慣習』、『マニュアル』に無意識的に囚われる上に、人間関係や政治的なしがらみにも縛られるために、経営課題の分析において歪みが生じたり、改革案に手加減を加えたりしがちです。一方、そうしたしがらみから自由で、社内の『空気』を読む必要のない外部のコンサルタントは、遠慮なく『本気論』、『正論』を提示することができます。そのため、全体状況を把握している経営者からすれば、『やっぱり、そういうことか』と腹落ちする戦略提案をしてくれることが多いのです」(209ページ)
中小企業では、経営コンサルタントを顧問としている会社はあまり多くありません。また、経営コンサルタントを顧問にしている会社でも、「しがらみのない視点からの分析」を望む経営者も少なく、経営者の方針を踏襲し、経営コンサルタントの専門性を発揮してそれをブラッシュアップした内容の提案を望むことが多いようです。念のために付言しておきますが、私は、中小企業経営者の方は、経営コンサルタントに、自分の方針に沿った提案だけを求めてはいけないとは考えてはいません。
ほとんどの中小企業の経営者は、いわゆるオーナー会社のオーナーでもあり、自分と会社は一心同体です。したがって、中小企業経営者の決断は重いものであり、経営コンサルタントはそれを尊重しなければなりません。とはいえ、中小企業経営者であっても、荒川さんが述べておられるように、「しがらみのない視点からの分析」を経営コンサルタントに求めることは有用だと思います。
ちなみに、私は、これまで何度も著名な経営コンサルタントのセミナーを聴講してきましたが、私と同様に聴講している方の多くは、とても業績のよい会社の経営者ばかりでした。だからといって、私は、業績のよい会社は経営コンサルタントから提案や助言を受けているからだとは考えていません。業績のよい会社の経営者ほど、経営コンサルタントを始め、多くの人の考えをきいて、自分の経営判断の精度を高めているのだと思います。すなわち、経営コンサルタントを活用することは、経営者の資質を高めることに有用であり、その結果、会社の業績を高めることにつながるのだと思います。
2024/11/25 No.2903