[要旨]
ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人元社長の新将命さんによれば、人差し指を相手に向けた時には、中指、くすり指、小指の3本は自分に向いているように、他責の指は1本でも、自責の指は3本、すなわち、自責と他責は3:1の割合と考えるべきということです。そこで、責任転嫁は成長機会の自己否定であって、よりよいリーダーとなるためには、自責を基本姿勢としなければならないということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人元社長の新将命さんのご著書、「伝説のプロ経営者が教える30歳からのリーダーの教科書」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、新さんによれば、日本人はディベートが苦手であり、会議も予定調和で行われることが多いようですが、それでは、会議の質が低くなってしまうというので、会議では、あえて反対意見を述べてもらうことで、会議の質を高めることができるということについて書きました。
これに続いて、新さんは、リーダーは責任転嫁することを避けなければならないということについて述べておられます。「片手の指は5本ある。両手だと10本だ。誰かの責任を追及することを指弾するともいう。指弾するときに、指弾する相手に向かって伸ばす指は人差し指1本だ。人差し指を相手に向けた時には、中指、くすり指、小指の3本は自分に向いている。他責の指は1本だが、自責の指は3本、自責と他責は3:1の割合なのである。
誰かを責めているときには、実は、その3倍自分を責めているのである。何らかのトラブルが起きたときには、自分の手を見て思い出してほしい。誰かに責任があったとしても、その3倍の責任が自分にはあるのだ。5本の内、残るもう1本はどこを向いているのか。残る親指は天を向いていて、神の審判を仰いでいるのである。『提案するは人、決定するは神』(Man proposes , God disposes .)である。よりよいリーダーとなるためには、そして、よりよい人生を送るためには、自責を基本姿勢としなければならない。
責任転嫁は成長機会の自己否定である。他責で得られるのは後悔だけである。電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みんな私が悪いのよ。鳴かぬなら、私が鳴こう、ホトトギス、というくらいの心がけが望ましいし、私の知っている優れたビジネスパーソンは、1人の例外もなく、自責の人ばかりである。英語では、“I own the problem . I own the solution .”(問題は自分のもの、解決も自分のもの)という」(156ページ)
自社の事業がうまくいかないとき、経営者の方は、その原因は自分にはない、または自社にはないと考えることでしょう。それは、日々、事業を成功させるために懸命に仕事に取り組んでいるわけですから、当然のことでしょう。特に、コロナ禍のように、まったく経営者の方に責任がないにも関わらず、事業活動が制限されてしまったときは、そう考えることは極めて自然なことです。
では、仮に、事業がうまくいかない原因が自社になかったとすれば、それで問題は解決するかといえば、そうではありません。1日でも早く事業が改善するために、何らかの対策を講じなければなりません。そして、これは厳しい考え方ですが、解決策があるのに、それを実践しなかったとすれば、事業が改善しなかった原因の一部は経営者にあると言えます。そういう観点から、新さんは、「よりよいリーダーとなるためには、自責を基本姿勢としなければならない」と述べておられますが、これをその通り受け入れるには、相当の精神力が必要ではないかと、私は考えています。
そこで、私は、「問題解決のためにできることがあれば、すべて実践することが経営者の責務」と考えるようにしています。しばしば、「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉を耳にしますが、この考え方と同じです。こう考えれば、解決策に取り組もうとする意欲がわきやすくなると、私は考えています。
2024/10/28 No.2875