[要旨]
コピーライターの川上徹也さんによれば、起業して10年後に残っている会社は26%しかなく、経営者の多くは失業者予備軍の状態になっているということです。では、経営者が失業者にならないようにするにはどうすればよいかというと、単に、「商品が売れればいい」と考えてしまいがちですが、それでは誤りで、「商品が売れ続けなければならない」と考えなければならないということです。
[本文]
コピーライターの川上徹也さんのご著書、「価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ」を拝読しました。同書で、川上さんは、経営者は失業者予備軍であるということについて述べておられます。「新しく起業した会社、新しくオープンしたお店。10年後にどれくらいの確率で生き残れるかご存知ですか?中小企業白書(2006)によれば、新しく創業した会社(個人事業主を含む)は設立して1年以内に約27%が廃業。
3年後に生き残るのは約半分の52%、7年後には34%、10年後には26%という驚くべき数字が出ています。会社が設立しやすくなった現在では、生存率はもっと下がっていることでしょう。会社をつくったり、お店をオープンさせたりするということは、普通の人間にとっては、人生で最大の勝負をかけたものです。当然、儲かると思って起業し、繁盛すると思ってお店をオープンさせたはずです。
でも、現実は、10年生き延びられるのは少数派。ちょっとショッキングな言い方にすると、もし、あなたが、今、現在、会社の社長や、お店のオーナーであっても、10年後には4分の3の確率で失業者になっているかもしれないということです。これって衝撃的な数字ですよね。では、どうしたらいいのか?『とにかく商品が売れればいいんだろ』と単純に考えたあなたは、ちょっと危険かもしれません。
例え、一時期爆発的に売れたとしても、次の年に売れなくなってしまったらどうでしょう?やっぱり生き残っていけませんよね。むしろ、バカ売れしてしまったことで、大がかりな設備投資なんてしていたら悲劇です。続いて売れなければ、借金だけが残ってしまうことだってあるでしょう。そう、会社やお店が生き残るためには、商品やサービスが売れ続けなければならないのです」(18ページ)
川上さんは、「現在、会社の社長や、お店のオーナーであっても、10年後には4分の3の確率で失業者になっているかもしれない」というご指摘は、統計を根拠にしているものなので、実感を持てる人はあまり多くないかもしれません。また、事業を廃業することになったとしても、それは、必ずしも業績不振で事業が行き詰ったとが原因とは限らないので、廃業した会社の経営者全員が失業者になるわけではないと思います。
でも、起業した会社のすべてが、事業を軌道に乗せることができるわけではないということも事実でしょう。むしろ、軌道に乗せることができないままになる会社の方が多いと思います。では、どうすればよいのかというと、それは、引用部分の後で川上さんがご説明しておられるので、それは後の記事で説明しますが、まず、「とにかく商品が売れればいいんだろ」と考えないようにするということです。
これを言い換えれば、「会社やお店が生き残るためには、商品やサービスが売れ続けなければならない」と考えなければならないということです。「商品が売れればよい」のではなく、「商品が売れ続けなければならない」というのは、当たり前のように思われますが、実際には、「商品が売れればよい」とだけ考えている経営者の方が多いと思います。「商品が売れればよい」という考え方は、商品だけに視点が向いています。
一方、「商品が売れ続けなければならない」という考え方は、会社の仕組みや体制に視点が向いています。ただ、起業しようとする会社の多くは、「何を売るか」、「どのような事業をするのか」が決まっており、そのために会社を設立するので、「商品が売れればよい」と考えてしまいがちになるのでしょう。
でも、経営環境が不透明な時代は、「商品が売れ続けなければならない」という考え方で臨まなければならないことは、容易にご理解されると思います。Amazonも、最初から本を売る事業を始めようとしたのではなく、当時、黎明期だったインターネットを使って優位に競争を進めるにはどのような事業をすればよいのかという視点から、本の販売を始めています。したがって、これからの時代は、「商品が売れ続けなければならない」という考え方が、ますます、重要になってきています。
2024/9/7 No.2824