[要旨]
ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんによれば、ブランディングには、「意図的」、「一貫性」、「継続性」という、要となる3つのキーワードがあるそうです。すなわち、「思い付きで発信し、一貫性のある活動を継続できていない」という状態は、どれだけ素晴らしい商品やサービスであっても、ブランディングが成功しないということです。
[本文]
今回も、ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんのご著書、「愛され続ける会社から学ぶ応援ブランディング」を読んで、私が気づいたことについてご説明したいと思います。前回は、渡部さんによれば、ブランディングには、外部のステークホルダーに向けたエクスターナルブランディングと、内部の役職員に向けたインターナルブランディングがあるそうですが、インターナルブランディングがあまり実践されないことによって、社内にブランド・アイデンティティが浸透していないと、顧客にもそれが伝わらず、ブランディングが奏功しないことになるということを説明しました。
これに続いて、渡部さんは、ブランディングに関する活動は、一貫性が大切ということについて述べておられます。「ブランディングには、『意図的』、『一貫性』、『継続性』という、要となる3つのキーワードがあります。『意図的』→はっきりとした目的意識を持つ。『一貫性』→すべてにおいて矛盾がない。『継続性』→足を止めずに続けていく。つまり、『思い付きで発信し、一貫性のある活動を継続できていない』という状態は、ブランディングの要を、すべてを守れていないのです。これではどれだけ素晴らしい商品やサービスであっても、ブランディングが成功することはありません。
まず、『思い付きで発信』という部分についてです。『思い付きで発信』とは、ブランド・アイデンティティに則っていない発信のことを指します。せっかちな人に多いのですが、よいアイディアがパッと思い付いたときに、すぐに発信してしまうのです。これを防ぐには、その時の感情ですぐに発信しないこと。有効な方法としては、情報を発信する前に、一定時間(例えば、10分程度)待つことです。時間が経った後、内容がブランド・アイデンティティに沿ったものかを見直し、発信すべきかどうか判断します。
次に、『一貫性のある活動』という部分についてです。『一貫性がない』ということは、矛盾が生じている状態だということ。ブランディングでは、よほどのことがない限り、1回の発信で致命傷を負うようなことはないので、活動に矛盾が生じていれば、矛盾がなくなるよう修正していけばいいだけの話です。ただ、矛盾していることに本人が気付いていないこともあります。これを防ぐには、お客様からのフィードバックを受け取れるような顧客接点を設計しておく必要があります。
最後の、『継続できていない』という状態は、足が止まっていることです。ここに関しては、厳しく言うつもりはありません。なぜなら、ブランディングを続けていれば、どうしても一時的に足が止まってしまうこともあるからです。その理由は、ブランディングを続けていても、なかなか成果が見えづらかったり、逆に、ブランディング活動で本業が忙しくなってしまったりと、会社によって様々な理由があるでしょう。理想は、足を止めないことですが、『足を止めないようにしている』という姿勢さえあれば、それはただの休憩であり、改めて始動することができます。
まったく止まってしまうのは論外ですが、一時的な休憩は人間誰にでもあることです。まったく気にする必要はありません。大リーグの大谷翔平選手が活用していたことでも知られる、目標達成シートの生みの親であり、私が師事する原田教育研究所の原田隆史先生はこう言います。『三日坊主でもいいじゃないか、それを10回続ければ1か月継続したことになる』ブランディングに終わりはありません。一時的に足が止まったとしても、次の一歩さえ踏み出せれば、問題はないのです」(117ページ)
今回の渡部さんのご指摘も、まったくその通りであり、また、ブランディングに関する活動だけに限らず、事業に関するあらゆる活動にもあてはまると思います。その理由は、渡部さんもご指摘しておられる通り、「明確な意図があり、矛盾なく一貫性があって、継続できる活動」は、最も効率的で効果が高いからです。
しかし、実際に事業活動に関わるのは、有機的な「人」なので、なかなか理想的な活動ができないということも事実です。だから、どれだけ理想的な活動ができるのかが、事業の優劣につながると言えるでしょう。では、どうすれば、「明確な意図があり、矛盾なく一貫性があって、継続できる活動」ができるのかというと、私は、経営者の方が、野球でいうエースピッチャーではなく、ベンチの監督になることだと思っています。
野球で試合をしているとき、ピッチャーはマウンドの上に立ち、まさに戦いの場に立っています。そうすると、目の前のことに振り回されてしまいがちです。しかし、グラウンドの外側にいる監督は、グラウンドを俯瞰し、また、ゲーム全体の流れを考えながら、冷静に判断することができます。そういった面から、私は、直接的な事業活動は、なるべく現場の方に任せ、社長はベンチにいる監督のように、事業活動を俯瞰して判断するようにすることが、理想的な事業を実現できるようになると思います。
2024/7/11 No.2766