鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『応援消費』という行為は『イミ消費』

[要旨]

ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんによれば、顧客からの応援による購入はイミ消費と言い換えることができるということです。このイミ消費とは、モノ消費(商品を自分のモノにする消費)→コト消費(商品を購入することによって得られる体験を重視する消費)→トキ消費(その日、その場所でしか体験できないこを重視する消費)→イミ消費(商品を購入することによって生まれる社会的な価値を重視する消費)と遷移してきた行動のことだそうです。


[本文]

今回も、ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんのご著書、「愛され続ける会社から学ぶ応援ブランディング」を読んで、私が気づいたことについてご説明したいと思います。前回は、渡部さんは、必ずしも、すべての顧客から応援されることを目指すのではなく、現在、自社を評価している顧客、すなわち、売上上位20%の顧客に対して応援されるための働きかけを行うことが妥当であり、20%の顧客との関係を深めることで、顧客生涯価値(LTV)を高めることができるということについて説明しました。

これに続いて、渡部さんは、応援消費とはイミ消費と言い換えることができるということについて述べておられます。「2021年のコロナ禍、朝日新聞の『天声人語』に次のような記事がありました。『JR三鷹駅(東京)から歩いて5分。雑居ビルの地下1階に、“中華そばみたか”はある。10人も座れば満席の小さいラーメン店だ。全国の飲食店と同じく、コロナという強い逆風にさらされた。最大の試練は、春と夏にだされた緊急事態宣言で、お酒を出せなくなったこと。いわゆるラーメン居酒屋で、夜になれば、客たちはビールを楽しむ。

宣言下で1日7ケース分あった注文が消え、客足も遠のいた。“自分で3代目、経営して12年目ですが、売上が半減するのは初めてでした”と店主の橋本重光さん(40)。支えは常連客だった。“ビールの代わりに”と、あえてサイダーやのなるコールビールを注文して助けてくれる人。“店がなくなったら困る”と、毎回お釣りを受け取らない人もいた。お土産用の麺を買って帰る客も絶えない。橋本さんは、“ころな下で人情の連鎖が心に染みました”と話す』

このラーメン居酒屋さんだけでなく、コロナ禍では全国で同じような応援消費が行われたと思います。私も少額ながら、地元で立ち上がった飲食店を応援するクラウドファンディングで支援をさせていただきました。この応援消費という行為は、言葉を変えると(中略)『イミ消費』を言えます。消費者のニーズは、『モノからコト』、『コトからトキ』、そして時代は消費することに対してイミ(意味)まで考えるようになりました。

イミ消費は、社会的意義のある活動を応援するという意味もありますが、もっとシンプルに『自分いとって大きなイミ(意味)をもつブランドだから応援する』ということでもあります。先程の新聞記事にもありましたが、そのお店がなくなったら自分が困るのです。好きなブランドが苦境に立たされていれば応援する。これは予測するまでもなく、人として最もシンプルで当たり前の行動ではないでしょうか。

ブランドが苦境に陥っていなくても応援する心は同じです。自分にとって大きなイミ(意味)を持つブランドだから、購入(消費)というカタチで応援したり、まわりに紹介したり、ブランドが脱線しそうになっている時には苦言を呈したり、適切なフィードバックをしたりします。そのようなイミ(意味)をブランドに付加することが、応援されるブランドにとっては必要不可欠な要素であり、そのイミを持ったブランドこそが応援され、愛され、そして運ばれ続けるのです」(63ページ)

賛否両論はあるものの、年をおってふるさと納税が増えている理由のひとつには、渡部さんのご指摘しておられる、イミ消費をしようとする納税者のニーズがあるからだと思います。もちろん、ふるさと納税によって、納税者は2,000円のみの負担で、返礼品をもらえるというメリットが最も大きいと思いますが、どの自治体にふるさと納税をしようかというときに、その返礼品の生産者を応援したいとか、その自治体やその自治体の経済活動を応援したいという理由もあると思います。

私も、毎年、沖縄県石垣市ふるさと納税をして、石垣牛のハンバーグをいただいていますが、これは、石垣市の畜産業を応援したいというほかに、石垣市長が、度重なる外国船の領海侵犯への対応に費用がかかっているので応援して欲しいという呼びかけをYoutube番組で行っているところを見たので、それに応えたいという気持ちが起きたからです。

話を本旨にもどすと、最近は、消費者は、自分の購買行動を通して、自分の理想とする社会を実現しようとする傾向にあるようです。例えば、2018年12月にスタートした、売れ残りパンを販売する通信販売プラットフォームの「rebake」では、年を追って販売量を拡大し、2022年末までに700トンのパンを販売し、廃棄されるパンの削減に貢献しています。これは、パンを食べたいというよりも、フードロスをなくす社会を実現しようとするイミ消費だと思います。

また、電気自動車の人気が高いのも、脱炭素社会を実現しようとする消費者が多いことの表れだと思います。さらに、アパレル店で販売されている商品のうち、発展途上国の工場と適正な価格で取引されているフェアトレード商品であるものを購入することで、発展途上国の労働者の労働環境の改善に貢献しようとする消費者も少なくないようです。中小企業でも、地産地消の製品や、地域の伝統的な技術を残そうとする製品などを製造することで、イミ消費を喚起することになるのではないかと、私は考えています。

2024/7/2 No.2757