鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

会社の倒産の最大の原因は債務超過

[要旨]

負債の部の金額が資産の部の金額より多くなる状態を債務超過といいますが、このような会社は融資金利の支払額が多くなり、さらに支払い能力が低下します。その結果、融資金利の支払いができなくなると、銀行は融資を引きあげることになり、会社は倒産してしまいます。すなわち、会社の倒産の最大の原因は、債務超過の状態にあることといえます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、クラウドファンディングは、多数のネット参加者の数パーセントの人から賛同してもらえれば、十分な資金を集めることが可能になり、銀行の融資業務にとってかわる可能性がありますが、クラウドファンディングを利用できる事業は限定的であり、当面は、銀行の融資業務のすべてに代替できるわけではなさそうだということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、会社の倒産とは債務超過になることであるということについて述べておられます。「倒産というと、『原因は資金繰りが悪化し~』といった話が出るが、会計的に言えば、もっとシンプルだ。負債が資産を上回り、純資産がマイナスという状況になる。これだけだ。今ある負債のすべてを返済できないので、これから誰かがお金を貸しても、それも返せない。というわけで、どこもお金を貸してくれず、外部への支払いができなくなり、倒産する。

お金を貸さないというこうした判断の下にあるのは、債務超過という財務状況だ。借金をすると、利息を支払わなくてはいけない。利息は『費用』として収益から差し引かれるものだから、利息を払うと、当然、PL上の利益は圧縮される。つまり、ちょっと大きな負債を抱えると、その利息の支払いも大きくなり、それだけ利益が減り、結果的に純資産も減る。せめて、利息を支払えていれば、銀行は、それほど文句はいわない。だが、資産から得られる収益が芳しくなければ、利息の支払いに追われ、やがて利息の支払いすら滞る。すると銀行も黙っていない。

これは倒産する企業に見られる1つの典型的パターンだ。それも、債務超過という、資産の方が負債より小さい状況だからだ。資産の生み出す収益が、負債の生み出す利払いよりも小さいのは、債務超過に大きな原因がある。いずれにしても、債務超過という状態が、すべての原因になっている。債務超過こそ、倒産の理由なのだ。この点からも、ストックのBSが重要になる。よくわかっていない人ほど、倒産というとあーでもない、こーでもないと御託を並べるが、そのほとんどは債務超過が根本原因になっている」(126ページ)

倒産について、少し、補足します。「倒産」という言葉は、法律上の定義がないので、人によってどのような状態を指すのかが必ずしも一致しないのですが、ここでは、業績の悪化によって手元の資金がなくなり、買掛金、給与、融資返済などができなくなり、事業が停止した状態を指すものとしたいと思います。ただし、この、手元資金がなくなることの原因ですが、長期的には業績が悪化したことが原因ではあるものの、メインバンクが支援する方針を打ち出している場合は、債務超過の状態であっても、融資によって支払資金は枯渇せず、事業を継続している会社もあります。

逆に、業績は黒字であっても、たまたま、資金管理の手違いで、不渡りなどを出してしまうと、そこで会社の信用が失われ、倒産してしまうということもあります。ここでお伝えしたいことは、会社が債務超過になったからといって、そこで、必ずしも、直ちに、機械的に倒産するわけではないということです。(そもそも、債務超過の状態になるということも、会社の経営者や、その会社に対して融資をしている銀行が、どうやって把握するのかという問題もありますが、それに関する説明は割愛します)

話を本題に戻すと、私が中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、経営者の方は、当座の支払資金の残高にのみ注目する傾向があるということです。買掛金の支払、給与の支払い、税金等の支払いなどは、もし手元に資金があれば可能であり、事業を継続できるわけですから、経営者の方は、手元資金の残高を確保しさえすれば、事業を継続できます。ところが、業績が悪化している会社は、事業での儲けが少ないわけですから、銀行などから融資を受けて手元資金を確保するしかありません。そうであれば、事業が赤字になったり、債務超過になったりすることのないよう、注力することが欠かせません。

ただ、事業の収支状況や、貸借対照表の純資産の部の金額までは気を向けず、手元資金の確保しか注力しない経営者が少なくないと感じています。すなわち、手元資金と、収益性、貸借対照表を管理しなければならないわけです。そうなると、経営者の方はたくさんのことを管理しなければならないと感じるかもしれませんが、私はそうではないと思っています。なぜなら、事業の目的は利益を得ることです。そして、利益を得れば、収益性は改善し、繰越利益によって純資産の部が増加し、さらに、手元資金も拡大します。

すなわち、事業の本来の目的を達成しさえすれば、それで会社が倒産することを防ぐことができるわけです。ところが、その利益を得ることが難しいということも現実です。そこで、多くの経営者の方は、銀行からの融資に頼り、手元資金を確保するという手段をとるのでしょう。もちろん、一時的に、そのような方法をとることは問題ないと思いますが、でも、最終的に利益を得るという事業本来の目的を達成しようとしなければ、結局、「倒産」することになってしまいます。

2024/6/23 No.2748