[要旨]
千葉ロッテ監督の吉井さんによれば、ダルビッシュ選手は好奇心が強く、そのことから、向上心を常に持っているそうです。そして、そのような選手は、才能をさらに開花させることができるので、一流選手に囲まれているプロ野球界で、壁にぶつかっても、それを乗り越えて活躍を続けることができるようになると考えることができるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、千葉ロッテマリーンズ監督の、吉井理人さんのご著書、「最高のコーチは、教えない。」を読んで私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、吉井さんが北海道日本ハムのコーチ時代、ある投手に、試合の翌日に振り返りを行わせた結果、その投手は気づく能力が高まっていき、ピッチングを自分自身で改善できるようになり、さらに、安定した成績を残せるようになったということを説明しました。
これに続いて、吉井さんは、実は、振り返りがしっかりできる選手はあまり多くないということをご説明しておられます。「これまで、コーチとして選手に接してきて、振り返りがしっかりとできる選手は、ほとんどいなかった。唯一、できると思ったのは、ダルビッシュ選手ぐらいである。彼は、野球に対する興味、好奇心が人並み外れている。あれだけの実力があるのに、少年のようにまだうまくなりたいと思っている。ほかの選手が投げている球種も、どうやってなげているのか、興味津々だった。
好奇心があるから、向上心も出てくる。彼のすべての行動の源には、好奇心があると言い切っていいと思う。なぜ?なぜ?と、問い続けていると、課題は自然に出てくるものだ。問題なのは、ダルビッシュ選手のような好奇心はなく、何も考えずに野球をやってきた選手が、その能力の高さによって、ずば抜けた結果を出してしまうことだ。プロに入るまでは、それで通用するだろうが、プロにはとてつもない才能を持った選手たちが大勢いる。才能だけでは通用せず、いずれ壁にぶち当たる。
しかし、今まで何も考えてこなかったから、壁にぶち当たっても、どうすれば乗り越えられるのか、考えることができない。そうした選手が自分で考えらえるようにするためのコーチングが、振り返りなのである。自ら振り返り、『何でだろう?何でだろう?』と、必死に考えてもわからないから、コーチのアドバイスに耳を傾ける準備ができるのだ。アドバイスをきく態勢ができていない選手に、コーチが何を指導しても、右から左へ抜けていく」(87ページ)
ダルビッシュ選手は、北海道日本ハムで7年間プレーした後、米国メジャーリーグに移ってから、11年目のシーズンを迎えています。ダルビッシュ選手がこれだけ長期間活躍できるということは、才能があることが最も大きな要因だと思いますが、吉井さんが述べておられる通り、向上心を持ち続けているからだという面も大きいと思います。そして、これについては、私は、ビジネスにも当てはまると感じています。というのは、私は、かつて、ある有名な経営コンサルタントの方のセミナーを定期的に聴講していたのですが、そのセミナーに参加しておられる経営者の方は、業績のよい会社の経営者の方ばかりでした。
私は、本当は、あまり業績のよくない会社の経営者の方が、このようなセミナーを聴くべきではないかと思っていたのですが、逆に、もう学ぶ必要はないと思われる方ばかりが参加していたのです。このことから、向上心のある経営者の方が経営している会社は業績がよく、向上心のない経営者の方が経営している会社は業績はあまりよくないということなのだと、私は考えています。
確かに、このような捉え方は、直接的な因果関係を示すことはできませんが、吉井さんが本にも書いてあることから、強い相関関係があると、私は考えています。もちろん、ほとんどの人は向上心があることはよいことだと考えると思いますが、それにもかかわらず、前述の通り、業績のよい会社の経営者の方は学ぶことがすきですが、業績のあまりよくない会社の経営者の方は、あまり学ぼうとしなかったり、自分の考え方や活動について改善しようとしなかったりするという傾向が強いようです。
2023/5/13 No.2341