鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

偶然や敵失で勝利が舞い込むこともある

[要旨]

現実には、戦略とはまったく関係なく、偶然に、あるいは競合他社がエラーやミスをしたことで、勝利が舞い込むことが少なくありません。例えば、カメラ販売店だったジャパネットたかたは、ラジオ番組出演をきっかけに、放送内でコンパクトカメラを紹介し、50台を売上たことから、通信販売専業に転換し成功しました。


[本文]

今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、当初に意図した戦略である熟考型戦略がそのまま実現することもありますが、当初は意図しなかった戦略である創発型戦略が実現することもあるので、熟考型戦略と創発型戦略を循環させながら、らせん状に発展させていくことが大切であるということを説明しました。

これに続いて、鈴木さんは、「偶然や敵失で舞い込む勝利」についても言及しておられます。「教科書では触れられることはまずありませんが、現実には、戦略とはまったく関係なく、偶然に、あるいは競合他社がエラーやミスをしたことで、勝利が舞い込むことが少なくありません。ビジネスも、実際の戦闘やスポーツの試合、将棋の対戦などと同じなのです。

例えば、インテルマイクロソフトプロセッサ市場の勝者となることができたのも、インテル自体の戦略によるものではありません。1980年代後半に、IBMが、マイクロプロセッサがパソコン事業における利益の多くを占めるようになることを予見できず、インテルに外注することを決めたからです。そうして、マイクロプロセッサが次々と売れるようになってから、インテルは、自社がメモリーメーカーから、マイクロプロセッサ企業へと進化していることに、ようやく気がつきました。

元はカメラ販売店だったジャパネットたかたは、1990年に地元長崎のラジオ局から、通販番組に出ないかと声をかけられました。最初は、店舗を紹介する予定だったのですが、商品も紹介したいと無理を言って変更してもらいました。5分の番組が放送されると、コンパクトカメラが50台、当時の月商200万円に対して、100万円を売上ました。そこで、店頭販売から通信販売へと大きく舵を切り、1991年にはラジオ通販の全国ネットワークを完成、1994年には、テレビ通販へも進出し、通販専業となったのです」(148ページ)

この偶然による勝利なのですが、非論理的なので、佐藤さんも「教科書では触れられることはない」と述べておられます。ただ、私も、中小企業の事業改善のお手伝をしている中で、因果関係が明確ではないものの、チャンスをつかんでくる中小企業は、決して少なくありません。ただ、それは、因果関係が明確に把握できないだけで、実は成功を自ら引き寄せている可能性は高いのではないでしょうか?

そこで、事業活動は、「偶然」と思われるチャンスが舞い込んで来るよう、ポジティブに、または、アグレッシブに臨むことが大切だと思います。そのような姿勢でいることは、ちょっとした変化をチャンスとしてとらえることができるようになるのではないでしょうか?ジャパネットたかたが、ラジオ出演の声がかかったとき、商品紹介を打診したのも、ポジティブな姿勢で事業活動に臨んでいたからできたことだと思います。

2023/3/11 No.2278