鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『腕を上げて』価格を2倍にする

[要旨]

菓子メーカーの京西陣菓子宗禅では、社長が開発したチョコレートあられを、当初、100円で販売していましたが、その後、「腕を上げた」ことを理由に、200円に値上げしました。しかし、価格が2倍になっても売れ続けています。ただし、値上げをするにあたっては、有名ホテルで接待用に採用されるなど、第三者から評価を受けているという要素も重要です。


[本文]

今回も、小阪裕司さんのご著書、「『価格上昇』時代のマーケティング-なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか」を読んで、私が気づいたことについてご紹介します。小阪さんは、「自分が提供できる価値のレベル」を高めることで値上げに成功した、京都の菓子メーカー、「京西陣菓子宗禅」の社長の、山本宗禅さんの事例を同書でご紹介しておられます。「同社のオリジナル商品の中に、『金襴』という名のあられがある。これは、かつて苦境にあった宗禅の業績を回復させた初期のヒット商品の流れをくむ商品で、あられをチョコレートでコーティングした「チョコレートあられ」だ。

山本さんが工夫を重ねた末に生まれた商品でもあり、お値段は1粒100円、サイズは親指ほどで、当時の宗禅のあられの中でも破格の値段だった。しかし、その価値が伝わったことで、ヒット商品となった。(中略)実は、この商品だが、今は、1粒100円ではなく200円になっているが、その理由は原価高騰ではない。(中略)山本さんによれば、『昔の自分と今の自分とでは、腕が全然違っている』から値上げをしたということだ。

実際、山本さんは、初期のヒット後も精進を続け、チョコレートあられは、ザ・リッツ・カールトン京都のVIPルームのお菓子に選ばれたり、ドバイ王室への献上品になったりと、実績を着々と積み重ねてきた。つまり、研鑽を重ねてきた自分は以前の自分ではない、だからそれに見合った価格を付けたということだ。そしてこの商品は、価格が倍になったにもかかわらず、今まで以上に売れている」(131ページ)

山本さんは、腕を上げたから価格を上げたと説明しておられますが、その「腕を上げた」というのは、ザ・リッツ・カールトン京都で評価されるなど、客観的な評価が説得力を高めていると思います。お菓子を値上げするには、おいしくなければならないという条件が前提ですが、さらに、マスコミで紹介されたり、コンテストで表彰されたりするといった、第三者から評価されると、値上げはより受け容れられやすくなると思います。

2023/1/20 No.2228