鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

優良会社は“借り渋り”をしている

[要旨]

業績のよい会社であっても、銀行から有利な条件で融資を受けるために、その時点で融資を受ける必要がなくても、銀行から融資セールスを受けた時に、融資を受けて、恩を作るようにしています。そうすることで、低利で融資を受けることができるようになったり、将来、本当に融資を必要とする状況になった時に、融資を断られる確率が低くなります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。児玉さんは、業績のよい会社が融資の条件について銀行と上手に交渉している事例を紹介しておられます。

「優良企業と言われている会社は、お金を借りる時も、非常に戦略的です。優良企業は業績がいいから、お金の心配をしていないと思ったら、大間違いです。『どうやったら有利に資金調達ができるかを、いつも意識している』と、都市銀行から長期プライムレート(最優遇貸出金利)で借入をしている、優良企業の社長が言っていました。また、優良企業は、自分が借りたいときではなく、銀行が貸したいときにお金を借ります。その方が、いい条件で融資を引き出せるからです。

毎年、3月が銀行の決算ですから、銀行が融資の依頼に来る時期が分かっています。銀行から頼まれても、1度目は断ります。その後、銀行からお願いされたので、必要がないけれど、仕方なく借りてあげるというポーズを取ることにより、低金利で長期の融資を勝ち取っています。一般企業がお金が足りなくなってから銀行へ借入に行って、“貸し渋り”にあっているのに対して、優良企業は、“借り渋り”をしながら、有利な条件で交渉しているのです」(168ページ)

金利などの融資条件の交渉は、融資以外の商取引と同じで、イニシアティブを握っている側が有利な条件を引き出すことができます。特に、児玉さんの示した事例にも書いてあるように、3月に銀行から融資を依頼されると、低い金利で融資を受けることができます。そのような実績を作ると、今度は、3月以外の時に融資を受けようとしたときも、日本国通過の指標金利が上昇したり、会社の業績が悪化したりしたといった事情がない限り、3月の時の条件で融資を受けることができます。

もちろん、融資が必要でない時に融資を受けてまで、条件交渉をする必要があるのかと考える方もいると思います。しかし、実際にそのような対策を行うかどうかは、リスクにどう対処するのかという経営者の方の考え方によるということになるでしょう。仮に、将来、自社の業績が悪化しても、銀行から融資を受けるつもりはないと考える方は、融資が必要でないときに、銀行から融資のセールスをされても、それは断ってもよいと思います。

でも、いますぐに融資を受ける必要はなくても、もしかしたら、将来、融資が必要になることがあるかもしれないと考える方は、銀行に恩を作っておくことは、良い条件で融資を受けることができるようになるだけでなく、融資を断られるリスクを低くすることにもなると思います。

2022/12/24 No.2201