鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

8倍の融資を得る利益のレバレッジ効果

[要旨]

税引前利益が2,000万円だとすると、税引後利益は1,200万円であり、それは、約5倍の1億円の融資を可能にすると言われています。したがって、利益を繰越すために支払う800万円の法人税は、8倍の融資を調達するためのコストと考えることができます。このように、利益を得ることは、手許資金を潤沢にするために重要なことと考えることができます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、銀行から受ける融資は、コスト面で、もっとも有利な資金調達方法であるということを説明しましたが、児玉さんは、これに続いて、融資可能額を増やすためには、利益も得ることが大切ということを述べておられます。

「利益を出して、内部留保としてお金を増やすのと、銀行から借入をするのと、どれくらい金額に差が出るのかを比較してみます。例えば、2,000万円の税引前利益が出ている会社があるとします。2,000万円の利益が出ても、法人税800万円(=2,000万円×法人税立40%)を払うと、会社に残るお金は、1,200万円です。これに対し、2,000万円の利益を出している会社であれば、だいたい税引前利益の約5倍の1億円の銀行借入が可能です。

借入しなければ、税引後利益1,200万円しかお金は残りませんが、銀行借入をすれば、その約8倍の1億円のお金をすぐに手にすることができます。これは8倍のレバレッジ効果と言えます。したがって、会社が集めたいと考えているお金の量から逆算して、利益を計上して、お金を借りる方法が効率が高いということです。すなわち、1億円を調達するための初期コストとして、税金800万円を負担していると考えれば、税金を払うのも、それほど苦にならなく感じられるようになります」(146ページ)

児玉さんは、税引後利益の約8倍の融資を受けることができると述べていますが、実は、私は、この根拠はよくわかりません。自己資本比率は20%以上が望ましいという観点からは、増加する融資可能額は、税引後利益の4倍程度であると、私は考えています。

でも、税金を払ってでも、利益を残すことは、安いコストでその数倍の資金を調達することが可能になるわけですので、そういう観点から、あまり節税にこだわりすぎずに法人税を払うことは妥当であるという、児玉さんのご指摘は、その通りだと思います。これは、逆に言えば、事業活動を発展させるためには、利益を得ることが重要だということです。そして、その利益を得ることは、手許資金を潤沢にするわけです。利益を得ないで、手許資金だけを潤沢にしようとすることは、理論的に不可能です。

2022/12/22 No.2199