[要旨]
遠藤さんによれば、マネジメントとは、他者を通じて物事を成し遂げるという意味であり、経営者は、組織の役割の一部に過ぎません。このことにより、組織的な活動ができるのですが、経営者にこの自覚がなければ、競争力の高い事業活動を実践することはできません。
[本文]
今回も、遠藤功さんのご著書、「生きている会社、死んでいる会社-『創造的新陳代謝』を生み出す10の基本原則」を読み、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。遠藤さんは、ソニー創業者の盛田昭夫さんの言葉を引用しながら、経営者の役割について説明しています。「実は、経営において『情』を重視することは、最も合理的であり、理にかなった成功への近道であり、そこには2つの理由がある。
まずひとつめは、どんなに優秀な経営者がいても、彼/彼女ひとりでは、何も成し遂げることができないという、厳然たる事実である。マネジメントとは、“Doing things through otheres”(他者を通じて物事を成し遂げる)と定義される。つまり、人をその気にさせ、人に動いてもらうことによってのみ、会社の目的、目標は実現される。盛田昭夫はこう語っている。
『トップ経営者がどれだけ優秀な手腕があろうとも、また、どんなに成功していようとも、企業の将来は、結局、そこで働いている人々の手に握られている。やや大げさな言い方をするならば、会社の運命を左右するのは社員たちなのだ』会社は、数多くの『役割』で構成されている。経営者はその中のほんの一部の役割を担っているに過ぎない。その自覚に乏しい経営者が大きなことを持続的に為すことはできない」(233ページ)
この遠藤さんのご指摘は、多くの方がご理解されると思いますが、実際には実践されていない会社が多いと、私は、感じています。失敗してしまう会社の例は、経営者が会社のことは何でも知っていて、何でも判断しないと気がすまないという場合です。この場合、会社組織が、社長ひとりとその他大勢という状況になり、組織的な活動はできません。そこで、会社が組織的な活動ができるようになるためには、遠藤さんの指摘するように、経営者は、「他者を通じて物事を成し遂げる役割」に徹しなければなりません。
しかし、「会社を起こしたのは、自分が4番バッターでエースになりたいからなのに、社長は会社の役割の一部でしかないというのでは、起業した意味がない」と感じる経営者の方もいると思います。その気持ちも理解できなくもないのですが、現在は、社長ひとりの力で会社を引っ張るだけでは、組織的に事業活動を行っている会社との競争に勝つことは難しいようです。遠藤さんもご指摘しておられるように、経営者は役割の一部に過ぎないという自覚がなければ、大きなことを為すことはできません。
2022/7/29 No.2053