鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

革新は小さな気づきから得られる

[要旨]

コマツは、自社製品にGPSや通信システムを標準装備し、保守管理、省エネ運転などの顧客への付加価値を高めただけでなく、自社の需給調整にも活用しています。しかし、これは、当初からIoTを活用しようとしたのではなく、盗難対策がきっかけで始まったものです。このような、小さな改善のヒントに気づく能力が大切です。


[本文]

今回も、遠藤功さんのご著書、「生きている会社、死んでいる会社-『創造的新陳代謝』を生み出す10の基本原則」を読み、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。遠藤さんは、事業の改善は、小さなことの積み重ねが大切ということを、再び、コマツの事例で説明しています。「戦略はダイナミック、かつ、大胆なものでなければならないが、実行は小さなことの積み重ねが何より大切である。まず、実行し、そのプロセスで多くのことを学習し、それを活かしながら次の実行につなげていく、日常における『スパイラルアップ』こそが、実行の本質である。

ちょっとした気づき、ふと思いついたアイディア、小さな足元の改善…(中略)、最初は何気ない思いつきにすぎなかったものが、それが起点となって、新たな価値創造が実現された例は多い。その好例が、コマツの機会稼働管理システ「KOMTRAX」である。建機の車両に搭載したGPS、通信システムによって、全世界の自社製品の稼働状況をリアルタイムで把握することができる。それによって、保守管理や省エネ運転など多種多様なサービスを提供し、自社の需給調整にも活用している。

そのきっかけとなったのは、盗難された建機でATMを破壊するという強盗事件だった。盗難対策として、『GPSをつけたらどうか』というアイディアが生まれ、検討が開始された。そして、国内市場、中国市場などでGPSの装備が標準化された。時代の先端を行く同社のIoT活用サービスは、実は、盗難対策から生まれたものだったのである」(218ページ)

コマツは、IoTによって自社製品を管理することで、顧客へのサービスを向上させるだけでなく、自社の生産計画も、より精緻化させています。これは、IoTが普及した現在は、当然のサービスのように感じられますが、もともとは、ちょっとしたことがきっかけで開発されたというところがポイントです。したがって、効果的な戦略を編み出すには、大掛かりなことをしなければならないという先入観を持たず、小さなことに気づく能力を涵養していくことが大切です。

2022/7/28 No.2052