[要旨]
本田技研工業の黎明期の経営者である、本田宗一郎と藤澤武夫は、お互いに正反対のタイプでしたが、2人は「建設的対立」を行なうことで、事業を創造的なものにすることができました。しかし、いったん成功した会社は、会社の中で建設的対立が起こらず、同質化してきて、創造的な事業が行われにくくなってきます。
[本文]
今回も、遠藤功さんのご著書、「生きている会社、死んでいる会社-『創造的新陳代謝』を生み出す10の基本原則」を読み、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。遠藤さんは、本田技研工業の2人の経営者を引き合いに出し、「建設的対立」の大切さを説明しています。「本田技研工業は、本田宗一郎と藤澤武夫という、2人の偉大な経営者によって『世界のホンダ』へと飛躍した。2人のタイプはまるで正反対で、ときには喧嘩も辞さず、本音ではぶつかり合った。(中略)
『私(本田)と藤澤の2人の間でも当然、意見の衝突や見解の対立はあった。そんなときには白熱の討論が展開する。しかし、これはケンカという感情のキレツではない。情熱を傾けてお互いの考えをただしあうのだ。いうならば理解への努力だ』創造のためには、『建設的対立』が必要なことはみんな頭ではわかっている。しかし、成功体験を積んだ会社ほど発想やアプローチが同質化し、『建設的対立』が起こりにくい。金太郎飴のように、みんながワンパターン化し、小さなコップの中での議論に終始しがちである」(78ページ)
遠藤さんが指摘するように、「建設的対立」が大切だということは、多くのビジネスパーソンは理解していると思います。その一方で、「イエスマン」ばかりを周りに従える「裸の王様」状態の「ワンマン経営者」は珍しくありません。そして、そのような経営者がいる会社は、当然、業績は低迷しており、そしてそれを改善できないままでいることが多いと思います。これに関して、私は、会社経営は「人間」が担う以上、避けられなことだと考えています。
なぜなら、これは私自身にも当てはまりますが、人間は、理性が本能に負けてしまいやすいので、理性では建設的対立が重要と分かっていても、どうしても耳障りのする意見を遠ざけてしまうのだと思います。だから、例えば、「社長は5年経ったら退任する」などの、内規を設けるなど、経営者の活動を制限するという工夫が必要だと思います。ただ、このようなことをしても、私は残念ながら限界があると思っています。私は、この課題は、会社経営の永遠の課題だと考えています。
2022/7/26 No.2050