[要旨]
大企業にとって、新興の事業や技術は、まだまだ小さく、確立されていないので、魅力に乏しく見えるため、その隙に、新興企業が新たな価値を創造することに成功し、経営資源の多い大企業が、経営資源の少ない新興企業に駆逐されてしまうことがあります。これは、イノベーションのジレンマであり、成功の復讐を意味することでもあります。
[本文]
今回も、遠藤功さんのご著書、「生きている会社、死んでいる会社-『創造的新陳代謝』を生み出す10の基本原則」を読み、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。「ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセンは、1997年に、『イノベーションのジレンマ』という理論を打ち出し、大きな注目を集めた。これは、イノベーション分野における『成功の復讐』を意味している。大企業にとって、新興の事業や技術は、まだまだ小さく、確立されていないので、魅力に乏しく見える。
また、既存事業とのカニバリズムが起きるリスクもあるため、取り組みが及び腰になってしまう。その結果、従来製品の改良を進める『持続的イノベーション』のみに陥ってしまい、従来製品の考え方を根本から否定してまったく新しい価値を生み出す『破壊的イノベーション』を軽視する傾向がある。その間に、新興企業が既存技術を組み合わせることによって新たな価値を創造することに成功し、既存の価値を駆逐していく。
大企業は最先端の高度な技術を有し、さらには経営資源も潤沢である。豊富な経験や実績があり、優秀な人材もいる。にもかかわらず、技術的にも大きく劣る新興企業の前に敗れてしまう。『持たざる者』が『持つ者』を駆逐するのだ。どれほど技術力や資源に恵まれていても、老化が進行する『死んでいる会社』は、リスクを恐れない新興の『生きている会社』には勝てないのである」(77ページ)
いわゆる、GAFAは、遠藤さんの指す新興企業にあたる会社だと思います。そして、本来なら、いまは、さらに新しい会社に「駆逐」される側に立っているところだと思うのですが、まだ、GAFAが成長し続けているというのは、GAFAが、「生きている会社」の状態を維持しているからなのでしょう。だから、遠藤さんは、「生きている会社」の状態を維持することが大切だと主張しているのだと思います。
また、遠藤さんの説明を読んで、私は、ボストンコンサルティンググループが提唱した、ポートフォーリオマネジメント(PPM)を思い出しました。PPMでは、既存事業(金のなる木)で得た資金を、新規事業(花形・問題児)に投入することで、自社内で新たな価値を創造できるようになりますので、これを実践できていれば、他者から駆逐されることは、ある程度、防ぐことができるようになるでしょう。
ただ、このとき、遠藤さんも指摘しているように、既存事業とのカニバリズムへの恐れや、現状を維持したいという保守的な考え方が会社に蔓延していると、PPMもうまく機能しないでしょう。したがって、会社の中のいわゆるマンネリズムを打破することが、事業を発展させることになり、それを促すことが経営者の大切な役割であるということを、改めて認識しました。
2022/7/24 No.2048