[要旨]
業績を急拡大して倒産する会社は少なくありません。中には、銀行からの支援を受け続けるために、無理して店舗を増やす会社もあります。そのため、銀行は、業績が急拡大している会社には、警戒しながら取引しています。そこで、銀行からの安定した支援を受けるために、適宜、情報開示を行うことが大切です。
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今回も、「なぜ倒産-令和・粉飾編-破綻18社に学ぶ失敗の法則」を読んで、私が気づいたことについて述べます。同書には、子供服の製造小売の、マザウェイズ・ジャパンの倒産の事例が紹介されています。同社は、1991年に設立され、その後、事業を急拡大しましたが、2019年に、大阪地裁から破産手続きの開始決定を受けています。そして、同書には、元社長の言葉が紹介されています。「売上が減るとどうなるか、商品の回転率が悪くなり、大量の在庫を抱えてしまうことになる。しかし、銀行から借り入れを維持するためには、在庫回転率が悪くなった理由を説明する必要があります。
『シーズン後に商品を持ち越しても、翌年に売れるから大丈夫です、これは不良在庫ではありません』と、言い訳をしながら、不承不承、融資を継続してもらい、その後も出店を続けて行きました。本音を言うと、最後の数年は、もう、出店はしたくありませんでしたが、出店は我々にとって成長している証であり、金融機関で借入をするための手段でもありました。出店を抑制して、店舗数を減らし、経費を厳しく抑え、もっと小さな会社を目指すのも1つの道だったのかもしれませんが、それはしたくないと考えていました」(66ページ)
同書には、マザウェイズ・ジャパン以外にも、事業の急拡大により倒産した会社がいくつか紹介されており、事業の急拡大は倒産の原因になるということは、よく知られていることです。しかし、事業を急拡大させて、さらに経営基盤を固めている会社もあるので、両者の違いを外見的に見極めることは容易ではないということも事実です。そこで、マザウェイズ・ジャパンの社長の言葉にもあるように、「出店は金融機関から借入をするための手段」とされることも珍しくありません。そこで、銀行も、事業が急拡大している会社に対しては、警戒しながら融資をすることになります。
成長している会社が、本当の実力で成長しているかもしれないし、見せかけの成長かもしれないので、もし、見せかけと分かったら、すぐに手を引くように準備をしています。では、実際は業績がよくないのに、引き続き銀行から支援を受けるにはどうすればよいのかということですが、これは難しいところですが、銀行を含めた利害関係者に、適宜、詳細な情報開示を行うことだと思います。情報開示を行うことによって、自社が業績の向上に真摯に取組んでいることを伝えることができ、また、仮に業績が悪化したとしても、透明性が高いことから、そのことだけで、直ちに、銀行が支援を停止すると判断することにはならないでしょう。
2022/7/21 No.2045