[要旨]
仮に、融資を受けている銀行から、粉飾の後押しを受けたことがきっかけで、粉飾を行なったとしても、粉飾を行うのは自社であり、99%自社の責任となります。また、そのような不心得な銀行は、自社がピンチのときに支援してもらえないので、取引を解消することが無難です。
[本文]
今回も、「なぜ倒産-令和・粉飾編-破綻18社に学ぶ失敗の法則」を読んで、私が気づいたことについて述べます。前回は、同書にも書かれているように、銀行からの融資を受けている会社が、その融資の貸し手である銀行から、粉飾を後押しされることがあるが、そのようなことがあっても、粉飾に応じず、また、そのような銀行との取引は解消すべきということを述べました。今回は、もし、実際に、銀行から粉飾の後押しを受けた場合、どうすればよいかということを述べたいと思います。
まず、融資相手の会社に銀行が粉飾の後押しをすることがあったとしても、それは極めて希なことであり、すべて、または、多くの銀行がそうであるとは考えないことです。冷静に考えれば、融資相手の会社の粉飾を後押しすることは、コンプライアンスに背くことであり、ほとんどの銀行職員は、コンプライアンスを遵守しています。それは、倫理的にそうだからということもありますが、そもそも、そうしなければ、ビジネスがうまく行かないからです。
だからこそ、粉飾の後押しをするような銀行職員に遭ったとしたら、そのような銀行職員がいる銀行は、自己都合で取引をする銀行であり、自社が真にピンチになっても味方になってくれるようなことは期待できませんので、繰り返しになりますが、なるべく早く取引を解消する方が無難です。次に、もし、銀行に後押しをされたことがきっかけで粉飾をしたとしても、その99%は、自社の責任です。「粉飾をしなければ、融資が受けられなくなると思った」と弁明したとしても、銀行は粉飾を明確に指示したわけではないし、仮に、指示をしたとしても、違法なことを実行した責任は自社にあります。
このように、粉飾を行うことは、最終的には、自社の責任であることに変わりはありません。これに対し、「銀行は、中小企業に対して、融資を承認したり、融資を拒んだりする権限をもっているのだから、一般の会社より、高い倫理観を持つべきだ」と考える方もいると思います。私もそう考えますが、仮に銀行から粉飾の後押しをされたとしても、前述のように、それだけでは、粉飾を正当化することはできません。
さらに、粉飾のきっかけは、銀行以外からも持ち込まれることがあります。融通手形による資金融通や、架空売り上げの計上に協力を依頼されることも、実際に起きています。したがって、最終的には、自社自身で、粉飾は行わないという強い意思を持つ必要があります。倫理観を貫くことは、自社の事業の継続の妨げとなると思いたくなることもあると思いますが、粉飾は違法であるだけでなく、問題の先送りに過ぎません。本質的な事業の継続の方法は、業績の改善に真摯に取り組む以外はありません。
2022/7/19 No.2043