鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ギブの精神で取引することが成功要因

[要旨]

ある、エンジェル投資家として成功した方は、かつて、商社勤務時代に、米国で、ギブの精神を発揮し、中国やインドのビジネスパーソンと取引していたろこと、やがて、その人たちのネットワークができあがり、そのネットワークでその方自身も助けられるようになりました。このように、ギブの精神で接する相手は、顧客だけでなく、すべてのステークホルダーを対象にすることが大切です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、瀧本さんのご著書、「君に友だちをいらない」を読んで、私が気づいた点についてご紹介したいと思います。瀧本さんは、ビジネスでのネットワークの大切さについて、ある、投資家の方からきいたお話を同書に書いておられます。「私が、エンジェル投資家になろうと思ったきっかけを作った人物がいる。その人と出会ったのは、マッキンゼーを辞めて、日本交通の再建の仕事をしつつ、最初の投資先になる、ホットリンクを手伝い始めたころだ。実は、ホットリンクに最初に出資してくれたのが、そのSさんという人物である。

Sさんは(中略)、80年代に、アメリカに渡って、投資で大きな成功を収めた人物で、投資の世界では、知る人ぞ知る存在となっている。(中略)ホットリンクは、たまたま、幸運にも、Sさんに出資してもらえることになり、私も友人の内山幸樹(同社のCEO)とともに、Sさんと話をする機会を、何度か、得ることができた。当時の私も20代、若かったこともあり、ストレートにSさんに、『どうしてSさんは成功することができたのですか?』と、訊いてみた。すると、Sさんは、(中略)『私は20年前に、ある商社の営業マンとして、アメリカに渡ったんだが、渡米当初は、まったく英語ができなかった。(中略)

どうしようかと悩んでいた時に、アメリカ人は、ギブ・アンド・テイクを重視するという話をきき、それなら自分は(中略)ギブしまくろうと思った。(中略)しかも、その相手を、アメリカ人よりも、むしろ、当時、いっしょに働いていた、インド人や中国人にギブするようにした。その結果、自分のまわりに、私がかつて支援した人たちが集まってきた。彼らは、私に助けてもらったというつながりでお互いが交流するようになっていき、いつの間にかネットワークをつくるようになった。私が何かで困っているると、そのネットワークの誰かが勝手に助けてくれるようになり、結果的に、自分に大きなテイクをもたらしくれるようになった』と答えてくれた」(159ページ)

このSさんの話からは、ギブの精神が成功をもたらしてくれたと考えることができます。そして、私は、この「ギブの精神」は、慈善的なものや、道徳のようなものとして考えるのではなく、現在のビジネスにおいては、より、本質的なものになっていると考えています。というのは、これまでは、販売先(顧客)の要望に、どれだけ応じることができるかが、事業の成否のポイントと考えられてきましたが、これからは、要望に応じる相手は、販売先だけでなく、仕入先、従業員などの、ステークホルダー全体に広がって来ていると思います。

なぜなら、自社の事業を、より、洗練されたものにしようとするのであれば、仕入相手や従業員なども、より、優秀な相手と組まなければなりません。そうであれば、自社こそが、仕入相手や従業員からも、選ばれる存在にならなければなりません。そうなるためには、Sさんのように、ギブの精神でステークホルダーに接することが、ますます、大切になってきていると思います。

2022/7/14 No.2038