鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

グレイナーの成長モデル

[要旨]

米国の経営学者のグレイナーによれば、会社の事業が拡大するにしたがって、経営スタイルは変えなければなりません。ところが、経営スタイルを変えることを怠ってしまうと、そのことが事業拡大の阻害要因になってしまうことに注意が必要です。


[本文]

九州大学ビジネススクールの小城武彦教授が、ポッドキャスト番組で、「グレイナーの成長モデル」についてお話しておられました。グレイナーは、米国の経営学者で、1979年に発表した、「企業成長の『フシ』をどう乗り切るか」という論文の中で、「会社は、いくつかの異なるステージを経て成長していく」と述べているそうです。そして、「大切なことは、ステージが変わるたびに経営のスタイルを変えなければいけならず、現状のステージで必要とされている経営のスタイルが、次のステージにステップアップする際の邪魔になるので、注意しなければならない」そうです。これにつては、心あたりのある経営者の方も多いと思います。

グレイナーによれば、まず、起業したばかりのころの会社の役職員は、皆、エネルギッシュに仕事に取り組んでいるものの、組織を動かす仕組みづくり、コミュニケーションの確保、銀行への融資の申し込みなど、経営者の方があまりやりたくない仕事が出てきてしまいます。そこで、管理業務などを専門的に行う人を新たにメンバーに加えることで、次のステージに進むことができますが、その後、管理業務を担当する従業員たちと、生産現場で働いている従業員たちの間で、役割や立場が異なることにより、摩擦が起きて来るようになります。そこで、管理業務に関する権限の一部を、生産現場に委譲することで、次のステージに移ることができるようになるそうです。

ここまでの内容については、ほとんどの方がご理解できることだと思います。ただし、実際に問題になっていると私が感じることは、グレイナーが指摘しているように、ステージが移る段階で、それまでのスタイルを変えられないために、ステージを移すことができない会社も少なくないということです。極端な例ですが、従業員が100人くらいになっても、社長がなんでもひとりで決めようとしていると、会社の事業は拡大できません。ところが、社長は事業の成長を望んでいて、それでいて、経営スタイルを変えようとしないために、自分の望みを実現することができないでいることになってしまいます。したがって、どのように事業を拡大していくかということも大切ですが、経営スタイルも変えて行かなければならないという前提で事業に臨むことも大切になるということを、改めて感じました。

2022/5/27 No.1990